さすがに午後3時以降は、客足が少なかった。 店のテレビはすべてサッカーにしていたが、お客が少ないせいか、見ている人も少なかった。 ずっと見ている人が4,5人程度、あとは入れ替わり立ち代りだった。 そのずっと見ている人の中に、本社の人間がいた。 こいつ、見ている人の誰よりも、行儀が悪い。 ずっと商品の上に頬杖をついて見ている。 この男を見て、ぼくは今日のサッカーの試合は見るまいと思った。 結果だけでけっこう。 ぼくは日本は応援していたけど、元々サッカーのことは詳しくない。 中田だ、稲本だ、と言っても、まったくピンとこない。 だから応援するといっても、オリンピックの日本選手を応援するノリである。 おまけに、試合を見てハラハラ・ドキドキだと精神衛生上にもよくない。 そのことはホークスの応援で充分に経験している。 ぼくが体調を崩すのは、決まってホークスの負けが込んでいる時である。
実際。今日は仕事が忙しくて、サッカーどころではなかった。 2週間ほど前から手がけている仕事があるのだが、その完成を見ないまま今に至っている。 今日もその仕事の続きである。 ああじゃない、こうじゃない、と一人頭を悩ませながらやっていた。 ぼくが仕事をやっている位置からは、かすかにテレビの声が聴こえる。 時折「ウォー」という歓声が聴こえるが、一度画面を見てしまうとそれに没頭してしまい、逆に仕事に集中できなくなる性質なので、なるべく気にしないようにしていた。
前半20分が経ち、30分が経っても、本社の怠け者はいる。 相変わらず、行儀が悪い。 ぼくが接客のためにその男のそばに行っても、頬杖ポーズで観戦している。 ふとその男の胸に目をやると、何とこの男はネームプレートもしてない。 普段、店の人間がネームプレートをしてないと、鬼の首を取ったように意見してくる本社の人間がこれでいいのか。
そのうち前半が終わったようで、その男は去っていった。 ぼくはそれから昼食をとったので、その男が後半戦まで見ていったのかどうかは知らない。 しかし、他の社員もその男の悪口を言っていたから、かなり長い時間見ていたのだろう。
ぼくは、前半「0−1」で負けていたのを知っていたが、後半は昼食をとってから昼寝をしていた。 売場に戻ると、もう試合は終わったようで、他のチャンネルになっていた。 そのため、ぼくが試合の結果を知ったのは、試合が終わってからかなり後である。 そうか、負けたのか。 もし試合を見ていたら、悔しくて、また体調を崩していただろう。 ああ、見なくてよかったわい。 本社の怠け者のおかげである。
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