| 2002年05月25日(土) |
自慢話(ビデオデッキ編) その2 |
あるお客さんから、「ビデオが欲しいんだけど、どのメーカーのにするか迷ってるんです。仕事中なので、そちらに行けそうもない。出来たら説明しに来てくれませんか」と電話をもらったことがある。 さっそくぼくは資料を持って、そのお客さんが勤める会社に行った。 そこでいろいろ話をするうちに、そのお客さんが「ソニーファン」であることがわかった。 つまり、そのお客さんは、ぼくを呼んで、ソニーの良さを確かめたかっただけなのである。 しかし、ぼくは最後まで諦めなかった。 VHSとベータとの違いを説明し、今後はおそらくVHSの時代になるだろうという持論を展開した。 その上で、その当時発売されたばかりの、ビクターの機種(後に名器と謳われた)を薦めた。 1時間近く説得したが、その時は結論が出なかった。 結局、後日店に行って決めるということになった。 何日か後にそのお客さんはやってきた。 そして、「あの後検討したけど、やっぱりソニーにする。いろいろ教えてくれて、ありがとう。勉強になりました」と言って、ソニーを買って帰った。
もちろんそのお客さんも、VHS勝利の時には何も言ってこなかった。 しかし、このお客さんとは何かの縁があったのだろう。 それから何年かして、こんなことがあった。 その頃は、ぼくはビデオ業界から離れ、楽器業界にどっぷり浸かっていた。 楽器というと、主なお客は学生である。 彼らは一様にミュージシャンを目指している。 その中に一人、ぼくが目をかけていた男がいた。 彼はいい感性の持ち主だった。 彼のオリジナル曲を何曲か聴かせてもらったが、荒削りながらそこに彼の才能が垣間見れた。 彼はよく店に遊びに来た。 ある日のこと、「しんたさん、おれ彼女が出来ました」と一人の女の子を連れてきた。 ちょっと気の強そうな顔をしていたが、かわいい子だった。 ところが、彼女はぼくを見るなり、「あのう、しんたさんですか。父からよくうわさを聞いてます」と言った。 「え、お父さんから?」 「はい」 「名前は何と言うんかねえ?」 「○○です」 「○○・・・? うーん、覚えがないねえ」 「以前、しんたさんビデオのコーナーにいたでしょ」 「うん」 「その時、お父さんの会社にビデオを売りに行ったでしょ?」 忘れていた記憶が蘇ってきた。 「ああ、あの時の」 「はい、あの時はお世話になりました。父は、しんたさんが一生懸命説明してくれたと言って、喜んでましたよ」 商売人冥利につきる話である。 嫌なことも多いけど、こういうことがあるから客商売はやめられない。 結局、その後ぼくが会社を辞めたため、そのお父さんとは再会を果たせなかったが、今でも強く印象に残る想い出である。
さて、VHSであるが、その後ぼくの予想通り圧勝した。 過去一度だけテレビであった映画『LET IT BE』、これをベータで録画した人、今は持ち腐れだろうなあ。
ところで、後の『レーザーディスクvsVHD』の時も、ぼくはレーザーの圧勝を読んでいた。 その当時、スナックに行くとVHDのカラオケをよく見かけた。 それを見るたびに、レーザーに替えたほうがいいよ、と助言していた。 その助言を聞き入れて、レーザーに替えた店もある。 あいかわらずVHDにこだわった店もある。 しかし、結果はご存知のとおり、レーザーの圧勝であった。 VHD店は、「あんたの言うとおり、あの時レーザーに替えとけばよかった」と言っていたが、後の祭りである。
さて、最近の『DVD』であるが、『RAM』になるのか、『−RW』になるのか、『+RW』になるのか、まだまだわからないところである。 メディアを扱っているメーカーさんも、どうなるのかまったく読めないという。 逆に「しんたさんはどう思われますか?」と聞いてくる始末である。 その時、ぼくは笑いながらこう答えている。 「さあ、難しいですねえ。どうなるんでしょうか」
|