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2002年03月19日(火) ぼくは嫌な奴である

趣味が悪いと言われればそれまでだが、ぼくは人を観察する癖がある。
こうして日記を書くからそうなのかと思われるかもしれないが、実は日記をつけていなかった小学生の頃からそうなのである。
小学生の頃は、人を観察してはよく笑いのネタにしていた。
また、ぼくは減らず口人間だったから、そのネタを口げんかの武器に使ったりもした。
学生時代を振り返ると、ずっとこんなふうだったように思う。

社会に出てからもその姿勢は変わらない。
いろいろなところで、人の観察ばかりしている。
日記をつけ始めたのは昨年の1月だが、それ以前は何のために観察していたのかというと、やはり笑いのネタのためである。
学生時代と社会人になってからと、生活面で何が一番変わるかというと、それは飲み会の回数が増えるということだろう。
長崎屋にいた頃は、2〜3日に一度の割りで飲みに行っていた。
ぼくは仕事中はけっこうふざけるほうだったが、飲むと決まって大人しくなった。
というよりも、おとなしく振舞っていたのだ。
いつも「しんちゃん、大人しいね」と言われるので、「ぼくは酒を味わって飲むほうですから」と返していた。
しかし、ぼくは別に酒を味わっているわけではなかった。
そう、一緒に行った人が酔っ払う姿を観察していたのだ。
何のために?
それは、次に飲みに行く時に、その人を肴にするためである。
大人しく振舞いながらも、ところどころでネタを出す。
その反応をまた観察して楽しむ。
こういう酒が一番おいしい。
「ちびまる子」に野口さんという、人を観察することが好きな、お笑い好きの暗い女の子が出てくるが、ぼくの性格は明るい野口さんと思っていただければいいだろう。

人を観察していると、どんな些細なことでも面白おかしく映り、且つそういうタイミングを逃さなくなる。
普段は話し上手で冷静に物事を判断する人が、酒を飲むと突然口がまめらなくなる、というのはよくあることである。
ぼくの知り合いもにそういう人がいる。
その人は、口がまめらなくなった時何を思ったか、「おれは、海綿体パパだー」と、前後の会話と全然関係ないことを口走った。
みんなあ然としていたが、ぼくは「だから人間観察はやめられん」とひとりほくそえんでいた。
その海綿体パパ氏には、こういうエピソードがある。
10人ほどで飲みに行った時のこと。
宴もたけなわになった頃、海綿体パパ氏が「ちょっとトイレに行ってくる」と席を立った。
ところが、何をやっているのか、彼はいつまでたっても帰ってこない。
「どうしたんだろう?」と心配になってトイレに行ってみると、個室のドアが全開になっている。
覗いてみると、彼はパンツを脱いだ状態で、便座に座ったまま眠っていた。
おそらく、用を達している最中に眠ってしまったのだろう。
この間抜けな格好を見たでも十分に笑えるのに、さらに彼は笑わせてくれた。
どういうわけか、彼はグラスを持ってトイレに入っていた。
もちろん酒が入っている。
ぼくが彼を見つけた時、そのグラスを持った手が動いていた。
グラスの中の酒がゆったりと波打っている。
「この人は眠ったまま、何をやっているんだろう?」と思って観察していると、その手がある法則にしたがって動いているのに気がついた。
「おお、この手の動きは!!」
・・・なぜか三拍子であった。

もう20年以上も前の話である。
今でもたまに海綿体パパ氏と飲む機会があるのだが、ぼくはこの時のことを相変わらず口にする。
そのつど反応が変わるのを観察するためである。
ぼくは、嫌な奴である。


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