[その1] 大物で思い出したが、中学2年の時のことである。 国語の授業で、「大きな人」という話になった。 先生が、「どんな人を“大きな人”というか?」と言って、中井という奴をあてた。 「中井の知っとる大きな人を言うてみ」 中井はすかさず、「ジャイアント馬場」と答えた。 「いや、そういう意味の大きな人じゃなくて、人間的に大きな人がおるやろうが」 中井はいっとき黙っていたが、先生がしつこく「中井、答えんか」などと言うのでパニくってしまい、早口で「モンスター・ロシモフ(後のアンドレ・ザ・ジャイアント)」と言い捨てて、座った。 先生は「モンスター・ロシモフ」を知らなかったのか、中井が座った後に、「おう、そういう人やのう」と言っていた。 ぼくらは小声で言い合っていた。 「変わらんやん」
[その2] モリタ君(エッセイ参照)登場である。 ある日のこと、モリタ君がいつものように遅刻をしてきた。 その日来たのは午後2時ごろであった。 ぼくが「また、あんた遅刻か。今日は何で遅れたんね」と聞くと、モリタ君は下を向いて「ね、熱が出ました」と答えた。 「熱がでたあ?いったい何度あったんね」 モリタ君は目をキョロキョロさせながら、憮然として言った。 「29度です!」 「え、29度!?」 「はい、29度です」 「ほんとに29度やったんやね」 「はい!」 「・・・、あんたは爬虫類か?」
[その3] 前の会社にいた頃、ちょっと変わったおっさんが、毎日のように来ていた。 目が小さく、すごい出っ歯であった。 いつも、小さな声でぶつぶつと独り言を言っている。 お客を接客していると、わざわざ横に来て、こちらの顔を覗き込む。 バイクの免許も持ってないくせに、フルフェイスのバイクのヘルメットをかぶり店の中を歩きまわる。 ・・・など、店にとっては大変迷惑なおっさんであった。 いつだったか、こんなことがあった。 いつものように、ヘルメットをかぶっておっさんが登場した。 しかし、その日は服装が違っていた。 なんと、ヘビメタの革ジャンを着込んでいるのだ。 そして、変に肩を怒らせて歩いている。 周りを見回しては、「ガー」などと言って威嚇している。 ぼくたちは、「相変わらずバカやのう」などと言い合っていた。 一人の小学生がおっさんを見ていた。 それが気に入らなかったのか、おっさんは小学生に駆け寄って行った。 そして、その小学生に向かって何か言っていた。 小学生は「ばーか」と言って、こちらに逃げてきた。 ぼくが「どうしたんね」と聴くと、「あのおいちゃんが、黒い手帳を見せて『逮捕する!』と言った」と答えた。 「手帳?」 「うん、『西部警察手帳』やった」
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