世に「ガンコ親父の店」というのがある。 今でも時々テレビで特集をやっている。 ぼくは、いつもこの手の番組をバカにしながら見ている。 「ガンコ親父の店」、要は「ガンコ親父」が売りの店というだけのこと、肝心の味のほうはわかりはしない。 テレビ局のほうは取材上まずいとは言えない。 だから、いかにもおいしそうな演出をする。 だいたいガンコ親父なら、こんな取材は断るはずだ。 それによく考えてみると、「頑固」というのは、人間が出来てないということだ。 つまり、「ガンコ親父」を売り物にするということは、「人間修行が出来てない、未熟者の親父でございます」というのを、世間に吹聴していることになる。 これは実に恥ずかしいことだ。
こちら北九州にも、「ガンコ親父の店」というのがいくつかあると聞く。 何年か前に一度、その「ガンコ親父の店」なるものに行ったことがある。 テレビで「ガンコ親父の店」がブームになる前には、その店は「ガンコ親父の店」とは呼ばれていなかったはずだったが。 その店に入って、「ガンコ親父」なる人がどの人かを確かめた。 しかし、そこにいたのは「ガンコ親父」ならぬ、妙に女性に馴れ馴れしく話すただの「軟派な親父」がいただけだった。 味のほうはまあまあだったが、ここの親父はひいきをする。 一見と常連の値段に差をつけていたのだ。 ぼくたちは一見だった。 どう見ても、隣のテーブルに座っていた常連の連中よりは、質も量も安く抑えたつもりだった。 隣の席の連中は、別にキープをしていたようではなかった。 しかし、勘定はぼくたちのほうが多くとられた。 「こんな店二度と来るか!」と思ったものである。
ぼくの家の近くに、ちょっとしゃれた居酒屋がある。 2年前のことだが、当時いつも黒崎や小倉といった繁華街でばかり飲んでいたのだが、たまには近くの店も開拓しておこうということで友人とその店に行ってみた。 30代の夫婦二人でやっていた。 奥さんはヤンキー上がりふうに見えたが、気のよさそうな人だった。 問題は主人のほうだった。 なんと、ガンコ親父を気取っているのだ。 立ち振る舞いが、いかにもわざとらしい。 ぼくがメニューを見ていると、突然主人が「ああ、それは常連さんのメニューだから、初心者の方はこちらのメニューで選んでもらうようにしてます」と言い、初心者メニューなるものをぼくに手渡した。 そのメニューを見ると「これは何の料理だ?」と思わせるような名前が書いてあった。 注文するたびに「これは何ですか?」と聞かなければならない。 一方の常連客メニューなるものは、誰が見てもわかる名前で書いている。 まさか、この店は一見の客に二度と来させないということから、こういうわからんメニューを使っているわけでもあるまい。 ということは、「おれの言うことに従え」という主人の意思に違いない。
まあ、そのことを気にせずに飲んでいるうちに、その主人ともぎこちないながらも会話を始めたのだが、よくよく話を聴いてみると、主人はぼくの小中学校の後輩だった。 後輩なら話が早いと思い、「なんか、この初心者メニューちゅうのは!?」などと、さんざん文句を言ってやった。 ぼくが帰る時、主人は深々と頭を下げ、「先輩、また利用してください」と言った。 ぼくは「誰が来るか」と思った。 当然その後その店には足を運んでない。 今後も行くつもりはない。 そちらは「ガンコ者」気取りかもしれないが、ぼくは根っからの「頑固者」なのだ。 なめるんじゃねえ!!
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