午前中、「ストーブの火が上がらない」とお客から電話が入った。 女の子が電話を受けたのだが、うちの店で2年前に買ったものらしい。 お客は女の子にいろいろ悪態をつき、「あんまり使ってないのに壊れるなんて欠陥商品じゃないのか」と言い出したので、「メーカーに連絡して対処させてもらいます」と言って電話を切った。 さっそくメーカーにFAXで修理の依頼をしたが、数分してメーカーから電話が入った。 「お客さんのところに電話したのですが、どうも不良灯油を使っていたようです。それで芯がだめになったんでしょう。お客さんに修理代が6000円ほどかかりますと言ったら、『そんなにかかるのなら新しいのを買う』と言って切られました」ということだった。 とりあえずは解決したので、そのことを忘れていた。
すると午後になって、そのお客から電話が入った。 またしてもその女の子が受けたのだが、「さっき電話したものだけど6000円も取るとはどういうことか」などと難癖をつけてきた。 最後には「責任者と代われ!」言い出した。 そこでぼくと電話を代わった。
「話は聞いたやろ。どうしてくれるんか!?」 かなり酔っているようだ。 ぼくは「『どうしてくれるんか』と言われましても、メーカーさんがそう言うのなら、こちらとしてはそれ以上のことは言えません」と言った。 「お前の店は、2年でだめになるような商品を売っとるんか!?おれはこのストーブを触ったことがないんぞ」 「じゃあ、2年間全然使ってないんですか?」 「・・・いや、去年使った」 「じゃあ、触ってるじゃないですか」 「でも、だめになったやないか。お前の店なんかで買うんやなんかった」 「どこで買っても、不良灯油なんか使ったらだめになりますよ」 「何で不良灯油を使ったらだめになるようなストーブを作るんか!?」 「それはメーカーさんに言って下さい。こちらも迷惑してるんですから」 「もういい。ストーブを持って来い!新しいのを買うけ。そのかわりちゃんと迷惑料は差し引いとけよ」 「じゃあ、こちらに来て選んで下さい。あとでまた欠陥だの何だの言われたら困りますから。それと今は売出し中ですから、迷惑料を差し引かんでも安くなっています」 「うちにストーブが2台あっても困る。どうするんか!」 「いらないなら引き取りますよ。1000円で」 「この上まだ金を取るんか!おれは、お前の所の店長を知っとるんぞ。家に来たこともあるし」
この話を聞いて思い出した。 このお客は、以前も悪くもないストーブのことで難癖をつけてきた人だった。 そういえば、その時も酒を飲んでいた。 そこで、「○○町の××さんですよねえ。ちゃんと覚えてますよ。あの時もいろいろ文句言ってきたでしょうが」とちょっと凄んで言ってみた。 すると相手の態度が急に変わった。 「ああ、そうでしたか。いや、メーカーから6000円と言われたので、ちょっと頭に来てたもんで」 「買うんですか、どうするんですか?」 「いや、何かいい方法はありませんかねえ」 「じゃあ、こちらで芯の交換しましょうか?2000円ぐらいで収まりますけど」 「じゃあ、今日取りに来てくれますか?」 「今日持って帰っても、すぐには芯がありません。火は点くんですか?」 「ああ、ちゃんと点いてます」 「点いてる?じゃあ故障じゃないじゃないですか」 「・・・いや、いい時と悪い時があって・・・」 「まあ、とにかく芯が入ったら換えましょう」 「お願いします」
いちおうこれで収まったようだ。 その後は電話はかからなかった。 しかし、問題は芯が入荷した時である。 今日以上に酔っていて、「寒いけ、1時間以内に修理して持ってこい!」などと言い出したら、また電話口でけんかになる。 逆に、その時はしらふで、「いや、そんな電話はしていませんよ。ストーブは調子がいいです」などと言い出したらどうしよう。芯の返品はきかないし。 どちらにしても、もう一波乱ありそうである。
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