ぼくがマンガを真剣に読み出したのは、小学2年の時である。 マンガがぼくのその後の性格を形作ったといってもいい。 それまでは、変わった人間ではあったが、わりと大人しい性格だった。 しかし、マンガを読みだしてから、徐々に変身していった。
何が変わったかというと、とにかくよく喋るようになったのである。 これは「おそ松くん」の影響だと思う。 とにかく、誰にでも話しかける。 近所のおじさんやおばさんにもよく話しかけていた。 おかげで、近所で有名になってしまった。 10年ほど前に小中学校の同窓会があったのだが、当時近所に住んでいた子が、「うちのお父さん、今でも『しろげしんたはどうしよるか?』と訊くんよ」と言っていた。 母が町内会の役員をしていた時、集会で知らない人から「息子さんは元気にしていますか?」などと声をかけられたらしい。 「え? しんたのことですか?」と訊くと、「ええそうです。息子さんが小学生の頃、うちに来て、よく屁理屈を言っていた」と懐かしがっていたということだ。
この頃「〜じゃん」とよく言っていた。 実はこの「〜じゃん」を、ぼくは「おそ松くん」独自のしゃべり方だと思っていた。 中学の時、横須賀の親戚が遊びに来たのだが、その時あまりに親戚の人が「〜じゃん」と言うので、「この人たちも“おそ松くん”を読んでいたのかなあ?」と思っていた。 「〜じゃん」が関東の方言だと知ったのは、20歳の時、上京してからだった。
小学3年の一学期、ぼくが隣の席の奴とおしゃべりばかりするので、席替えさせられたことがある。 休み時間だけではなく、授業中もずっと喋っている。 先生からいつも「廊下に立ってなさい」と言われていた。 ある日、隣の席の奴の親が「しんた君と同じクラスだと勉強せんけ、違うクラスにしてくれ」と怒鳴り込んできた。 担任は「クラス替えは出来ない」と突っぱねた。それでもその親がしつこく言うので「じゃあ、席を替えましょう」ということになった。 あとで担任に「あんたがペラペラ喋るけ、こんなことになるんよ」と文句を言われた。
当時ぼくはソロバン塾に通っていた。 そこでもおしゃべりは続いた。 先生からソロバンで何度頭を叩かれただろう。 「学校で充分喋ってきたんだろうから、ここでは静かにしなさい!」といつも言われていた。 こんなことだから、なかなか昇級しなかった。 他の人の3倍はかかったと思う。 ソロバン塾には3年間通ったが、4級までしか取れなかった。 普通は1年くらいで取れる級である。 塾をやめる時、先生から「もうちょっと落ち着きを持たないと、何をやってもだめだ」と言われた。 ぼくは「何を言っているんだろう?」と思っていた。
ぼくがその落ち着きを持つようになるのは、中学2年になってからである。 「あしたのジョー」にハマってしまったのだ。 当時、性格や考え方がジョーになりきっていた。 結局ここでも、マンガが影響した。 その後も何度か、自分の中で性格が変わっていったが、その時々に読んだマンガの影響がかなり強い。 最近の性格は、5年程前に読んだ手塚治虫の「シュマリ」の影響を強く感じる。 主人公シュマリは、子供っぽい大人である。
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