最近、うちのアルバイト連中が就職モードに入っている。 どうも慣れない面接に戸惑っているようだ。 だいたい、学校で教える面接マニュアルというのは、どこも横一線で、まったく個性というのが見えてこない。 たしかに企業というのは、いわゆる「良い子」を採用する傾向にあるから、個性ある人物より、マニュアル通りに受け答えできる人のほうがいい印象を与えることは出来るだろう。 しかし、そういう企業は伸びないということも知っておかないとね。
ぼくは面接というものを、過去何回も受けてきた。 別にマニュアルなどはなかったから、すべての面接が、行き当たりばったりだった。 今日はぼくの面接の歴史です。
19歳 ★R商事(派遣)・・・「君は歌手の○○に似ていますねえ」と言われ、不快を顔に表して失敗。最後に「君は販売には向いてないよ」と言われた。
★S衣料(衣料)・・・いとこと一緒に面接を受けた。質問はいとこにばかり向けられ、ぼくは完全に無視されていた。4、5日して、いとこに採用通知が着たが、いとこは断った。その後、ぼくに連絡があり「来てくれ」ということだった。 いとこの補欠扱いにされ、プライドを傷つけられたぼくは「いとこが行かんと言ったけ、ぼくに連絡したんでしょ?そんな所には行きたくありません!」と断った。 それから4年後、ぼくはその会社のまん前に出来た電気店で働くことになる。
☆中国展・・・タオルを首に巻き、サンダル履きで面接に臨んだ。5者面接だった。面接官のぼくに対する質問は「しんたさんは体格がいいから、体力がありそうですね」だった。ぼくは「はい」と答えた。それだけだったが、合格した。しかし、与えられた仕事は重労働だった。
☆Y陸運(運送)・・・「君は1ヶ月勤まるかなあ?」と言われたので、「勤まります!」とぶっきらぼうに答えた。ちゃんと約束の1ヶ月は勤め上げた。
22歳 ★K商事(食品)・・・東京から一時帰郷して、この会社の面接を受けた。 相変わらず、普段着のままだった。面接はその会社の社長がした。「君は車の免許を持ってないのか。明日からでも免許を取りに行ってきなさい。費用はうちで持つから」と言ってくれたが、その時は免許を取る気などなかったので断った。
★F総業(住宅設備)・・・面接が始まると同時に、面接官が他の社員に向かって大きな声で「みなさん、このしんたさんが我々に力を貸してくれるそうです」と言った。「なんか、このノリは!」とぼくは思った。そして「いついつ来て下さい。お待ちしています」と言われたが、行かなかった。
★福岡T(不動産)・・・職安で事務関係の仕事を探していたら、福岡Tが募集していたので、さっそくアポイントをとり面接へ。しかし行ってみると土地を売る仕事だった。頭のはげた面接官は「事務系は募集してない!」と言い放った。「しかし、職安では・・・」と言うと、「君は何がしたいのかね」というので「だからさっきから事務系と言っているでしょう」と答えた。「何度も言うが、うちは事務の募集はしてない。もうちょっと、自分のしたいことを明確にしないと企業は採用してくれないよ」と偉そうに言われた。カチンときたぼくは「事務員を募集と書いておきながら、そんな募集はしてない、と言うような企業には誰も来たがりませんよ」と言い捨てて、ぼくはそこを出た。
☆S企画(出版)・・・「フリーライター」募集とあったので飛びついた。筆記試験と面接が行われた。筆記試験のほうはさんざんだった。面接で「君は自分の性格をどう思っているか」と訊かれた。ぼくは迷わず「我が強いです」と答えた。元東京新聞の記者だった面接官は「おう、我の強そうな顔しとる。お前、筆記試験は全然だめやったけど、気に入った。明日から来い!」ということで、誰よりも早く採用が決まった。ここで1ヶ月働いたが、金払いが悪かったので辞めた。
★K商事(家電)・・・S企画を辞めてから、ここの面接を受けた。開口一番「ぼくは個性が強いのですが、この会社はぼくを使っていく自信はありますか?」と尋ねた。(生意気ですねえ)ぼくは面接の人が躊躇しているのを見て、「失礼しました」と言って帰った。実は、面接までさんざん待たされ頭に来ていたのと、面接会場に入り面接官を見るなり「こいつとは合わん!」と思ったから、そんな生意気な言葉を吐いたのだった。もちろん採用はされなかった。
23歳 ☆D(家電)・・・初めて大手企業を受けた。あの頃長髪をしていたが、しいて床屋に行かず面接に臨んだ。髪のことは咎められなかったが、履歴書を見て難色を示した。「君は簿記の資格を持っているが、ここは販売の仕事だよ。今回事務のほうは募集をかけてないんだけど」と言われた。ぼくは「販売でいいですよ。履歴書には書いてないけど、約1年家電販売のアルバイトをやっていました。販売に自信があります!」と答えた。「ああ、そうかね」、ということで採用になった。それから11年間この会社に勤めることになる。 採用されて3ヶ月ほど過ぎた時、面接をした部長がぼくに「あの時、君の長髪のことが問題になってねえ」と言った。「やっぱりね」とぼくは思ったが、「え?そんなに長かったですか?」ととぼけていた。 それから11年して、ぼくは「何で、あの時落としてくれんかったんか!」とその部長を恨んだ。
何十回も面接を受けているから、まだまだエピソードがあるが、今日はここまで。 学生諸君、参考になりましたか? マニュアル通りにやることだけが面接じゃないですよ。 「おれがこの会社を面接してやるんだ」という気概が一番大切です。
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