暑い! 夕方、歩いて本屋に行ったのだが、今日ほど影を求めた日はなかった。 建物や電柱の影を見つけると、それに沿って歩いていた。 信号や踏み切り待ちの時は、わざわざ後戻りして、影のある場所に身をおいた。 街全体がサウナ状態になっており、すれ違う人もあまりいなかった。 いつもは大手を振ってウォーキングをしている、暑苦しいおばさんたちも見かけなかった。 途中、カラスが道の真中をヒョコヒョコと歩いていた。 何か獲物を探していたみたいだが、あまりの暑さに汗をかいているように見えた。 ぼくが「カラス、暑いのう」と声をかけると、カラスは「カー」と言って首をかしげた。
本屋に着いた時は、虚脱状態であった。 一人風呂から上がったような顔をして、本屋の中に入っていった。 全身びっしょりだった。 しばらく涼んでから、以前から気になっていた本『台湾論』を探した。 ない。歴史の所を探しても見当たらない。 政治、国際、哲学、どこを探しても見つからない。 もう一度歴史の所を探してみたが、やはりない。 「あれだけのベストセラーがなぜないんだ!」と思いながら、足元に目をやった。本が積み上げてあった。 『アメリカの鏡・日本』、と書いてある。 「えっ!」なんと5年前から探していた本がそこにあるではないか。 すでに、『台湾論』のことは忘れてしまっていた。 何も考えず、あたかもその本を買いに来たような顔をしてその本を買った。 そしてぼくは満足した顔で本屋を出た。 探していた本のことを思い出したのは、家に着いてからである。 「まあいいや」と、ぼくはページをめくった。 それにしても分厚い本である。 読了までに何ヶ月かかることやら。
それにしても暑い一日だった。
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