白土さんの作品は、そのほとんどが社会主義思想で貫かれている。 確かに正しいんです。 言いたいことも充分にわかる。 表向きのきれい事が、70年安保当時、若者に受け入れられたのもよくわかる。 でも、社会はきれい事で成り立たない。 ソ連の例でもわかるように、表向きの平等は、一部の金持ちと多数の怠け者を作ってしまった。 やることやっても見返りがないんです。 国民もやりきれなかっただろう。 アフガニスタン解放に燃えるソ連兵が、その国で目にしたものは、自分達よりも裕福な生活をしている国民の姿だったという。 これでは、やる気も起きないだろう。 それと、社会主義国家に共通するのは、密告社会いわゆる「チクリ国家」であるということ。 いつも警戒しながら人と付き合うことは、悲惨なことである。 猜疑心を持って近所づきあいして、何が楽しかろう。
社会主義以前の歴史はすべて否定し、暗黒の社会だったと一方的に決め付け、「昔に比べれば、今は何と幸せな社会か」と吹聴する。 これは明治政府が徳川幕府を否定したのと同じ手法である。 さらに他国の情報は一切見せず、自国が一番だと言う。 例えば、K国のラジオは自国の放送しか聴けないように、チューニングダイヤルをハンダで固定しているという。
決して社会主義が悪いというのではないが、歴史は悪しき社会主義像を映し出した。 白土さんが、もし今作品を作るとしたら、その根底に社会主義を入れるのだろうか? それを知りたいものである。
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