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| 2005年02月10日(木) |
没ネタを書いてみる。(鏡→卑+屍銀) |
その日、その場で卑弥呼とあったのは本当にただの偶然だった。仕事の帰りで薄暗い道を歩いているところに彼女が現れたのだから。
夕焼け、空は赤く色づき、東の空はすでに夜の闇に包まれていた。赤屍はようやく仕事を終わらせることができ、やっと帰途につくことが出来た。そんなときだった。 軽やかな、しかし勢いのある足音が彼のほうに近づいてくる。赤屍は真剣を尖らせて向かってくる相手の様子を伺った。殺気はかすかだが感じられる。しかしそれは自分に向けられているものではなかった。 足音は二つ。追われているのかもしれない。 赤屍は溜め息をひとつつくと、もう一本裏の道に入ろうとした。せっかくわずらわしい仕事が終わったのにこれ以上余計なことにかかわりたくない。 足の方向を変える。赤屍が進もうとした。 「待って、赤屍!!」 聞こえてきた声は卑弥呼のものだった。足音のひとつは彼女のものだったらしい。 呼び止められ、仕方なく赤屍は振り返った。 「何です?」 不機嫌そうな声で一言返す。そんな彼に対して卑弥呼は汗だくになりながら彼を引き止めた。 「お願いだから私に合わせてちょうだい。理由は後で話すから。」 「は?」 「あーもー、あんたに借りなんて作りたくないけど、そんなことも言ってられないのよ!」 「私も早く帰りたいんですけど。」 「事が終わったらさっさと帰らせてあげるから!」 無気力な赤屍を卑弥呼は小声で、しかし必死に説得した。面倒くさそうな赤屍はそれに対して無気力に承諾する。特に何をするでもなく話をあわせれば良いと言うのだから仕方ないといった感じだ。なによりも、ここで何を言っても彼女は自分を帰らせてはくれないだろうと思った。 彼女をここに斬り捨てて行こうか。そんな考えが一瞬赤屍の脳裏をよぎった。しかしそれもすぐにやめることにした。何よりも、彼女のほかに感じた足跡の招待に非常に興味を引かれたからだ。 もう一人の足音の主は軽やかに姿を現す。 「ハニー、もう逃がさないよ。」 この闇の中でもはっきりとわかる。頭のてっぺんからつま先までほぼ白で統一されている彼は闇によく映えた。 「もう、いい加減にしてよ、この変態ホスト!!」 「ほう・・・もう一人は鏡君でしたか。」 意外そうに赤屍は鏡を見る。これは面白いことが起こるのではないかと期待する。 「久しぶりだね、ジャッカル。こんなところで何をしているんだい?」 鏡は相も変わらず楽しそうに問いかける。今日の鏡はいつも以上に嬉々としていた。 「仕事の帰りですよ。そうしたら突然卑弥呼さ・・・。」 「赤屍!もう、最近連絡取れないから心配したんだから!」 「は・・・?」 赤屍が迷惑そうに話し出すと卑弥呼は慌ててそれを妨害した。しかもそれは思いもよらない言葉で。赤屍も鏡もその言葉に思わず反応した。一体何を言ってるのかとばかりの顔で卑弥呼を見る。 そんな二人を無視し、焦りと不安が聞き取れるような声と口調で赤屍に話しかける。その上、赤屍の腕に両腕を回した。とても親しげに見えるように。 「まったく、心配ばかりかけないでよ。ずっと会えなくて寂しかったんだからね!」 その声からはどうしてもそれが彼女の本心だとは聞こえない。当の本人も当然そんな台詞を本心から言ってるつもりはない。腕を回すのだっていやだとばかりに完全に触れるぎりぎりのところで体を離している。とはいえ、例えこの場限りとはいえ鏡の攻防から逃れるためには他に方法が思い浮かばなかった。 「あの、卑弥呼さん・・・・・・」 何が起こったのか理解できずに赤屍は卑弥呼に意見しようとするが、卑弥呼の目が必死に訴えてくる。話を合わせろと言ったろ!と。それと同時に服の袖から銀次の写真をちらつかせる。いつぞやマリーアからもらったアイテムだ。いつかは役に立つだろうと思って持っていたのが思いもよらぬところで役に立った。 これが欲しかったら協力しろと卑弥呼は目で訴える。 酒によって真っ赤になってる銀次の写真。楽しそうに歌ってる銀次の写真。ややきわどい格好で寝ている銀次の写真。その他諸々。 その瞬間赤屍はとても協力的になった。卑弥呼に目で訴える。必ず持っている写真のすべてを渡してもらいますよ、と。 卑弥呼はわかったと目で答えた。 赤屍はいつもなら銀次に向けるような顔で微笑した。 「申し訳ありません、卑弥呼さん。私もずっと会いたかったんですが、どうしても仕事のほうの都合がつかなかったんです。寂しい思いをさせてしまいましたね。」 卑弥呼の背筋に冷たいものが走る。しかし、赤屍はその体勢を崩さなかった。この演技をどこで見につけたのか卑弥呼は不思議に思うが、今はそれどころではない。あまりの気持ち悪い赤屍の対応に叫んで逃げたいところをあえて抑えて卑弥呼は続けた。 「いいのよ、わかってくれれば。」 「では今日はもう何もありませんし、これからは二人だけで過ごしましょうか?」 「そ、そうね。久しぶりだからいっぱい甘えさせてくれるんでしょ?」 「当然ですよ。何がお望みですか?」 「そうねぇ・・・。」 赤屍は慣れた様子で卑弥呼を扱う。今の赤屍には銀次の写真のことしか頭にない。目の前の卑弥呼を脳内では銀次に変換されている。今、赤屍の前にいるのは卑弥呼ではなく銀次なのだ。 対する卑弥呼は鳥肌が全身にたっていたが、長袖の服を着ているのが功を奏して誰にもばれていない。 そんな二人のやり取りを見せられている鏡は当然面白くない。初め、驚いた様子で見ていた鏡も次第に面白くなさそうな表情をしていく。 「ハニー、これはどういうことだい?」 むすっとした表情で鏡が卑弥呼に言い寄る。 その様子を見て卑弥呼は少しは効果があったのかと期待してしまう。 卑弥呼はあと数ミリだけ赤屍に近づいた。 「ということで、私たち付き合ってるから。あんたが付け入る隙はないから。」 そう言い切る。 こんなことで本当に鏡をだましきれるのか正直なところはかなり不安だった。自分の台詞には全く心がこもっていないのだから。 しかし、それを赤屍は上手くカバーした。それが赤屍の意図するところでなかったとしても。 赤屍は近寄ろうとする鏡を遮った。 「近づかないでくれますか?彼女は私のものですよ?」 その台詞は当然鏡の癇に障る。 「へー。ジャッカルにそういう趣味があったとは知らなかったよ。」 顔は笑っているが目は笑ってない。 しめた、と卑弥呼は思う。 「行こうか、赤屍?」 完璧なまでの赤屍の演技には心底感服したが、いつぼろが出るとも限らないので鏡の言葉に答える間を持たせず、強引に会話を打ち切る。 ぐいっと赤屍の腕を引っ張り、鏡の要る方向とは逆へと歩いていった。 後ろに静かにも怒りを隠さない鏡の殺気を感じながらも卑弥呼は完全に距離を置くまで、自分でも屈辱的な体勢を続けていた。
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バレンタインの没ネタです。 強引過ぎる。かなり強引過ぎる。 そんな展開で没にしたネタ。 とりあえず、気が向いたら続き書きます。 屍卑っぽくしてみようかなぁと思わなくもなくて考えたねただったんですけどねぇ。 だめですね。 ちゃんとしたネタはバレンタイン前後にでもアップできればと思います。
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