夏になった。 いきなり空が高くなって、青くなって、 水の音が恋しくて、風鈴を出してみたり、 遠くの雲がやけに白く大きくて、 あたしはコップに浮かんだ空気の粒を眺めながら もうとっくにぬるくなった水に手を浸ける。 窓を開け放しても風の通らない西日の射す部屋。 団扇も扇子も扇風機もない。 湿って重たい空気と、 汗でべとべとの布団と、 もっとべとべとのあたしの体。 穴の開いた網戸に虫が体当たりするのをじっと聞いている。 きっとそのうち眠くなる。 もっときゅうに空が高くなるよ。 そしたら、もうそこに秋が来てるよ。 でも、それはもっと先のお話。 あたしはべとべと汗をかいている。
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