行人徒然

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クローン人間
2001年01月28日(日)

 今日の読売新聞に載っていたが、懐妊治療の一環としてクローン人間の作成が行われそうだという。
 父親の細胞から胚を作り、それを母親の子宮に定着させ、父親のクローンを作るというのがその概要。場合によっては母親の細胞から胚を作ることも考えられるという。
 これには問題がある。

 1つに、国連で正式に採択された「人クローン禁止法」に引っかからないか。
 2つ目に、ドリー問題が解決されていないという事。
 3つ目に、果たして人で成功するかどうかまだ分からないという事。

 ドリー問題というのは、まだ覚えている人もいるかもしれないが、羊のドリーの問題である。
 ドリーはクローン作成時五歳だったが、彼のクローン体は生後半年にも満たないというのに五歳の羊と同じだけ細胞が歳をとった状態であったという結果が報告されたのだ。
 これは細胞内にあるタンパク質が分裂を繰り返すたびに短くなるという性質からきたもので、老いと密接な関係があるらしいことが分かっている。
 つまり、ドリーは5歳分年取った細胞をクローンしたわけだから、生まれてきた羊がどんなに子供でも、五歳から細胞年齢は始まっているという事だ。
 人で考えてみよう。
 例えば30歳の男性の細胞から胚を作ったとして、そのタンパク質は果たして新生児と同じだろうか。下手をすれば、生まれたてのあかんぼだというのに各細胞は30歳レベルという事が考えられる。その子が20歳になった頃、肌のレベルや内蔵機能は、すでに父親と同じ50歳台のレベルしかないという事ではないだろうか。
 まだ詳細は明らかにされていないが、このクローン作成は結構危険ではないかと思う。そういう意味では、命をもてあそんでいるんじゃないかな?って思う。
 生まれてくる子供。最初から年老いた状態という事は、その段階から長生きできない可能性が高い。
 彼らに罪はないのに、最初から長生きできない状態にある子供。その宿命を負わせるのは、子供が欲しいという両親のエゴだ。
 しかし、子供が欲しいという彼らの切実な思いも無視してはいけない。でも、この治療法は、生命工学の進歩に胸が躍り、ぜひともおこなって欲しいと思うのと同じくらい、してはいけないことだと思う。
 少なくとも今の段階ではの話だが、問題が多すぎる。



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