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窓のそと(Diary by 久野那美)
by 久野那美
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■ビーム君のビーム
私の部屋に、小さいロボットの人形があります。
ロボット好きのひとからプレゼントにいただいたものです。
パソコンをたたいていて、ふと顔をあげると目が合います。
目が合ったとき、彼はいつもこちらに向けてビームしています。
なので、ビーム君と呼んでいます。
ビーム君はいつも熱心に仕事をしています。
こちらに向かって放出されるビームが目に見えるようです。
が、彼が何のために、何に向かってビームを発しているのか、誰にもわからないのです。彼のビームには破壊力が感じられませんので、なんらかの平和目的の光線なのだと思うのですが、特に何かの役に立つようにも感じられません。しかも、目的の場所(というものがあるならば)に届いているようにも見えないのです。15pくらいで力尽きて落下しているような気がします。
実際に何もできないだけでなく、何かできるようにすら全く見えないロボットというのは、なんともいえない違和感があります。ロボットというのは、「何かの役に立つ」ためにああいう形をしているのだと思うからです。
ビーム君は、ちゃんと、ロボットに見えます。
でも、いわゆるロボットの役目を果たしているようにはけっして見えないのです。目が合うと、つい考えてしまいます。
「彼はいったい、何をするロボットなんだろう。」
そういう意味では、違和感というより存在感があると言えます。
では、いわゆるロボットの役割とは何なのかと考えてみると、これがよくわからないのです。わかるはずがありません。私はロボットを作ったこともないし、ロボットを使ったこともないし、ロボットを使いたいと思ったことさえないからです。
それなのにきっと心のどこでロボットに何かを期待しているのです。
私だけでなく、誰もがロボットに対して何かを期待しているような気がします。
いったい何を?
きっと、人間にはできないあらゆることを。
ロボットというのは、人間にはできないことを叶えてくれるものの象徴なのだと思います。
実用的なロボットはある特定の何かを叶えるために作られているので、実際に「何か」を叶える役割をはたすのですが、ビーム君のような非実用的なロボットは、誰の何を叶えればいいのかそもそも明白ではないため、「何かを叶えてくれる」という希望だけを象徴してビームしているのです。
なんの役に立つのかさっぱりわからないビームを一生懸命放っているビーム君を見ると、ふっと身体の力が抜けます。話しかけたくなったりもします。
でも、忙しそうなので邪魔しないようにしています。
何の役にもたってないんじゃないかと思うと、慰めたくなったりもします。
でも、一生懸命なので、邪魔しないようにしています。
ですけども。
ビーム君のビームの先にあるもののことを考えるとちょっと楽しい気持ちになります。誰も思いつかないような目的を叶えるためのビームがあって、それを一生懸命放出しているロボットがいる、ということは、なんとも心強く、愉快なことのような気がするのです。
10月01日(月)
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