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窓のそと(Diary by 久野那美)
by 久野那美
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■「ふつうの夜ですね。」
という台詞が今回の芝居のなかにあります。

私はこの台詞が大好きです。

ふつうの夜ってなんだろうね?
と、よく、出演者と話をしています。


話かわりますが。

今月はじめ、福島のアマチュア劇団の方が、いえ、正確にいいますと原発事故のため福島から埼玉へ避難中の劇団の方が、昔書いた私の戯曲を上演してくださいました。避難先の市の文化祭に出られたのです。

非常事態に演劇はどのように対応すべきか。
というしばしば見かける問いに、
「ふつうに公演をする」という答えを、代表の中野さんは出されました。
どこへ行こうが何があろうがふつうに公演をする。
その状況でふつうに公演をするということに、これまで見たことのない形の演劇への希望と愛情を感じました。

中野さんは、非常事態であることと演劇との関係には全く関心がないように見えました。非常事態だからこそ演劇をしなければ、とは彼はおそらく全く考えていなかったと思います。自分の心をゆさぶったものを表現しなければ、とも全く考えていなかったと思います。そんな余裕はなかった。でも、劇団なのだからふつうに公演をしようと思われたのだと思います。そして、いつも公演していたホールが使えないから、避難先の市の文化祭に出られたのだと思います。

制作の状況を時々メールで知らせてくださいました。
「いかにふつうでない公演をするか?」と知恵を絞る余裕のあるようなときにはおそらく想像もつかないような困難な状況が、淡々とつづられていました。

ふつうに演劇をする。
ふつうに公演をする。
それ以外のものがどれだけふつうでなかったとしても。

ちなみに、上演されたのは、「ガソリン」という、行くことと帰ることを巡る、10分程の短い物語です。


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意味ありげに脱線したものの。この話は今回のお芝居と関係ないです。

ですが、
「ふつうの夜ですね。」
という台詞を聞くたび、ふつう、ということばの奥にある存外な凄み、についてついつい考えてしまうのです。


このあいだから、「どっちなのか決めたくない」とか「金星」だとか「ふつうの夜」だとか、いったいどんな話なんだ?と思われている方もおられるかもしれませんが、
ふつうのお芝居です。不審に思わずぜひ見にいらしてくださいませ。


11月25日(金)
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