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きゅっ。
by きゅっ。
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■粟島
この部屋の窓の正面には、日本海に浮かぶ粟島が見える。
不思議なもので、快晴の日には全く見えないのに、今日のようにドンヨリの曇りや雨粒が窓に当たるようなときは、くっきり見えたりする。
調子良さそうな日は見えず、具合悪い日は良く見えてくる…
人生に似てるかな(く、くせぇ〜)
昨夜、遅くに弟がメールくれた。
メールのやりとりをするような親密な仲じゃないっすから、ホントは。
そんな弟がメールくれた。
内容は、シンプルに、この日記を読んでるということ、骨髄バンクに登録することにしたこと、そして、骨髄バンクを育てる会に入り活動することにしたこと、が書かれていた。
ホント、シンプルなメール。
味もそっけもないメール。
弟は、俺の一歳半下である。
学年は二学年違う。
小さいときは、常に日々の遊びをともにし、共通の友人たちと過ごした。
ちょっとデカクなってからは、野球、卓球、剣道、そしてスキー、同じスタートラインから始めることが多かった。
身体の発達の違いはあったが、ほとんど同じように弟はこなしてた。
大抵、大人たちは、小さく身軽な弟にセンスを見い出していた。
事実、そうだったのだろうけど、そういう話を聞くのがとても嫌で、兄弟を比べてくる大人が大嫌いだった。
大人になって、
俺は、建設省を辞め地元湯之谷村役場に入りなおした。一応、長男だし、家を継がなくてはならないと思ったからである。
ところが、採用が決まった直後、弟が仕事を辞め東京から帰ってくることになったと、母が嬉しそうに電話してきた。
俺は、退職を引き留めようとする人事といろいろやってた頃で、正直、ヒトの苦労の分からない勝手なヤツだと思った。
その後、議員選挙に立候補し、上位当選すると、ますます鼻につく存在になった。
特に、『大人たち』は、面白がって、二人を比べた。
国家公務員を辞めてきた役場職員というのは田舎ではエリート臭く見える。それに対し、高卒専門学校中退で議員になった弟を比べて持ち上げる大人の多かったことといったら…
まぁ、弟には弟の苦労もあっただろうけど。
俺は、弟には二期は議員をしないでくれと、選挙直後に申し出た。
弟は、分かった…といったくせに、二期目も三期目も議員になった。まぁ、これは、土着政治家の旨味を吸ってしまえば辞められるもんじゃないから。だけど、裏切った事実は残った。
二期目の立候補の時なんて、約束を守らない弟を責めた俺の方が悪いみたいなことを、選挙好きな父母から言われたし。
まぁ、そんな20代、30代を経て、お互い40を超えた。
弟は、市町村合併を機会に、在任特例市議会議員で議員を引退した。
いまは、薪ストーブ設置販売を生業とし、議員時代に培った人脈を生かし、NPOやボランティアに積極的に参加している。
いま、俺が病に倒れ、年老いた両親のことを考えるとき、
こんな葛藤の対象だった弟が地元にいることが、どんなに心強いか!
そして、HLAドナーとして不一致だったにも関わらず、更に一歩も二歩も前に進もうとしている弟が頼もしい。
そんな弟からの突然のメールはとても嬉しかった。
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07月22日(日)
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