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きゅっ。
by きゅっ。
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■第7章 鑑定評価の方式C
この場合において用いられる借入金償還余裕率は、借入期間の平均純収益をもとに算定すべきことに留意する必要がある。この方法は、不動産の購入者の資金調達に着目し、対象不動産から得られる収益のみを借入金の返済原資とする場合に有効である。
上記による求め方は基本的に次の式により表される。
R=RM×WM×DSCR
R:還元利回り
RM:借入金還元利回り
WM:借入金割合
DSCR:借入金償還余裕率(通常は1.0以上であることが必要。)
A DCF法の適用について
DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を予測しそれらを明示することから、収益価格を求める過程について説明性に優れたものである。
ア 毎期の純収益の算定について
建物等の純収益の算定においては、基本的には減価償却費を控除しない償却前の純収益を用いるものとし、建物等の償却については復帰価格において考慮される。
(ア)総収益の算定
一時金のうち預り金的性格を有する保証金等については、全額を返還準備金として預託することを想定しその運用益を発生時に計上する方法と全額を受渡時の収入又は支出として計上する方法とがある。
(イ)総費用の算定
大規模修繕費等の費用については、当該費用を毎期の積み立てとして計上する方法と、実際に支出される時期に計上する方法がある。実際に支出される時期の予測は、対象不動産の実態に応じて適切に行う必要がある。
イ 割引率の求め方について
割引率は、市場の実勢を反映した利回りとして求める必要があり、一般に1年を単位として求める。また、割引率は収益見通しにおいて考慮されなかった収益予測の不確実性の程度に応じて異なることに留意する。
割引率を求める方法を例示すれば次のとおりであるが、適用に当たっては、下記の方法から一つの方法を採用する場合又は複数の方法を組み合わせて採用する場合がある。また、必要に応じ、投資家等の意見や整備された不動産インデックス等を参考として活用する。
(ア)類似の不動産の取引事例との比較から求める方法
取引事例の収集及び選択については、「総論第7章 鑑定評価の方式」に規定する取引事例比較法に係る適用方法に準ずる。
取引事例に係る割引率は、基本的に取引利回りをもとに算定される内部収益率(Internal Rateof Return(IRR)。将来収益の現在価値と当初投資元本とを等しくする割引率をいう。)として求める。適用に当たっては、取引事例について毎期の純収益が予測可能であることが必要である。
この方法は、対象不動産と類似性を有する取引事例に係る利回りが豊富に収集可能な場合には特に有効である。
(イ)借入金と自己資金に係る割引率から求める方法
この方法は、不動産購入者の資金調達コストに着目したものであり、不動産投資に係る利回り及び資金調達に際する金融市場の動向を反映させることに優れている。適用に当たっては、不動産投資において典型的な投資家が想定する借入金割合及び自己資金割合を基本とすることが必要である。
上記による求め方は基本的に次の式により表される。
Y=YM×WM+YE×WE
Y:割引率
YM:借入金割引率
WM:借入金割合
YE:自己資金割引率
WE:自己資金割合
(ウ)金融資産の利回りに不動産の個別性を加味して求める方法
比較の対象となる金融資産の利回りとしては、一般に10年物国債の利回りが用いられる。また、株式や社債の利回り等が比較対象として用いられることもある。
不動産の個別性として加味されるものには、投資対象としての危険性、非流動性、管理の困難性、資産としての安全性があり、それらは自然災害等の発生や土地利用に関する計画及び規制の変更によってその価値が変動する可能性が高いこと、希望する時期に必ずしも適切な買い手が見つかるとは限らないこと、賃貸経営管理について専門的な知識と経験を必要とするものであり管理の良否によっては得られる収益が異なること、特に土地については一般に滅失することがないことなどをいう。
この方法は、対象不動産から生ずる収益予測の不確実性が金融資産との比較において把握可能な場合に有効である。
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03月08日(金)
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