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Kenの日記
by Ken
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■遠藤周作文学館へ

遠藤周作文学館に行ってきました。数年前に購入した「遠藤周作で読むイエスと12人の弟子」という本に、遠藤周作文学館が長崎の五島灘という海を臨む岬にあるという紹介があって、ぜひ一度訪れてみたいと思っていました。長崎には他にも興味深い名所・旧跡が沢山あるのですが、長崎での最初のフリーになった休日は「文学館」を選びました。

「文学館」は長崎駅からバスで1時間以上かかる市内からは随分離れた場所にありました。「文学館」は「道の駅夕日が丘」バス亭の近くにあるのですが、長崎駅から直通バスが少ないので、「桜の里ターミナル」まで行ってそこからバスの乗り換えて「道の駅」に行くことになります。私は数少ない直通バスを逃してしまったので乗換便を利用しました。乗換便は不便ではありますが、乗客は少なく「大きなバス独り占め」のような雰囲気でした。時々まどろみながらのバス旅も楽しいものでした。複数の旅人ならレンタカーが便利でしょう

「文学館」も予想通り見学客は私一人でした。昼近くになって女性3人組が入ってきました。文学館は「遠藤周作全人生」を展示していますが、私は展示品よりもその立地に感ずることがありました。文学館の西はどこまでも続き「五島灘」です。夕陽が美しく有名なようです。そして北側には「そとめ」の集落が見渡せます。その集落の中心には「出津教会」の白くて大きな建物があります。長崎では街中でも郊外の集落でも立派な教会が町のシンボルのようになっています。それはイタリアの都市の街並みを彷彿とさせるものです。しかし立派な教会は嘗ても厳しいキリスト教弾圧の歴史の上に建っています。ローマのサンピエトロ教会も「使途ペトロ」の処刑場所に建てられた教会です。

しかし遠藤周作の目は後世の人々に神聖化された殉教者にではなく「踏絵を踏んだ」人達に向けられました。殉教して聖人となった使途達ではなく、キリスト処刑の際にキリストを裏切った11人の弟子の「心持」に向けられました。そして「海と毒草」で表題に用いられた「海」です。海は美しく雄大ですが人間の運命を翻弄してしまう大きな力の象徴として考えられています。「踏絵を踏んだ人達」「キリストを裏切った弟子達」「倫理観が欠如して非人間的な行為を行う者達」の運命には抗しがたい「海」の力が付き纏っています。殆どの人間はその力に勝てないのです。文学館では「遠藤周作と歩く長崎巡礼」という本を買ってきました。暫くは遠藤周作流の長崎見物に浸ってみたいと思います。
01月16日(土)
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