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今日の私
by かずき
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■『屋根の上のヴァイオリン弾き』『LYNX』
すべて切れてしまった男の話であることは分かった。
やたらとサイバースペースという言葉を口に出して、
そちらとの関係性ばかりがつながっているオガワ。
邪魔にならない相手というエンドウは、彼の鏡像。

いつも神経を逆立てて、人間社会に戻ろうとしない
オガワの姿が「LYNX=山猫」なんだろうと思う。
どうしても、アッシュ・リンクス(『BANANA FISH』
という漫画の登場人物)を思い出してしまうのは、
少女漫画で育っている私としては仕方ないけれど、
彼にはアッシュの強さはない。薬などから来る
幻覚の、自分にとってだけの真実に囲まれて生き、
むき出しの神経に触られるイライラ感ばかりが強い。

私が感じ取ったのは、それがすべて。
アツヒロの演技にある繊細さと防衛本能がそのまま現れて、
当て書きかと思うほど似合っていた。(初演は別キャスト)
彼にある攻撃性の部分はエンドウが請け負っていて、
ためらいのない残酷さが整った肢体とあいまって、
孤独を際立たせ、美しいとすら感じてしまった。

何も変わらないままの死というエンディングが、彼に
とって満足の行くものであったならいいなと何故か思った。
エンドウの死体の上にかぶさるようにして倒れた
オガワが何となく幸せそうに見えたのは、
喜んでいいことなのか、私には分からないのですが。
でもちょっとだけ感じて不安になるのは、私の生活は、
『屋根の上の〜』より『LYNX』に近いってことかもしれません。

04月09日(金)
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