ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■7134,読書日記 〜『裏』
    * 裏 
  これは、面白い作家ならではの内容! 怒り、愚痴を人知れずに書きだし
(掻きだし)デドックスる。紙に一度、言葉にだして、破るのが一般的処方。
人間は己に甘く、他人には厳しい! そこに、四苦八苦が生まれ出る!
 それを活きる糧にする輩が加わるため、複雑の様相になる。
     『裏』岸本佐和子著 <ベストエッセイ2018 日本文芸家協会>…P348
【 私が私の裏垢でしたのは、悪態だった。
 当時の私はやさぐれていた。世界に対する黒い呪詛が腹の中に溜まって、
口からあふれ出る寸前だった。口を押えれば、鼻や耳や目から漏れそうだった。
だから口で言うかわりにツイッターで匿名で言うことにした。
電子板「王様の耳はロバの耳」だ。
 作った裏垢は、自分とフォローを許可した人以外は閲覧できない「鍵付き」
アカウント、しかもフォロー数ゼロ・フォロワー数ゼロとして完全密室。そこで
私は腹に溜まった真っ黒な呪詛を吐いて吐いて吐きまくった。
特大の頑丈な臼に、思いつくかぎりのむかつく人モノ組織出来事現象その他
その他を投げ入れ、それを勇壮な掛け声とともに渾身の気合で搗く。そいや。
そいや。そいや。搗く時間は素材と私のむかつきの度合いにより適宜変化する。
 そのようにして私は夜ごと完全密室で杵をふるい、大小さまざまな血の餅
の山を築いた。
 それがいつどのように終わったか、記憶が定かではない。 体内の毒を吐き
きってデドックスが済んだからなのか。気がつくともう、その裏垢には行かなく
なっていた。 そのうち、そこに入るパスワードも忘れ、アカウントも忘れ、
とうとうアクセスの術は完全に失われてしまった。 ついこの間の飲み会で、
たまたま人に話すまでは。すると、一人が目を輝かして言った。え、それって、
まるで現代アートじゃない。
 たしかに。誰にも、それを発した本人すら見ることなく自己完結した呪ソは、
入ってみれば純粋呪ソ。観念としての呪ソだ。そして私が裏垢の存在を忘れる
ことによって、それはアートとして完結したことになる。
 時どき、ネット空間の何処かに存在している筈のあの裏垢のことを考える。
誰にも聞かれることのなく小部屋にいつまでも反響しつづける自分の言葉は、
さぞかし孤独だろうなと思う。
 もしも何百光年かかけて宇宙空間を旅した悪態が、たまたま近くに通り
かかった高度な知的生命に受信され、解読されてしまったら。そして、
地球人が凶暴で危険な種族であるとみなされ、宇宙の平和のために駆除された
方が良いとされたら。 そうなったら、本当に死んで御詫びするしかないが、
たぶん私もとっくの昔に死んでいるし、もしかしたら人類も滅亡しているかも
しれない。 】
――
▼ 個々の日記帳には、この要素が色濃くあるはず。だから、殺人も、争いも
 最小で済んでいる。過去の内部検索をかけると、以下のような文章などが、
数多出てきた。まさかパンデミックが、世界を覆うとは! これで、初っ端。
10年前に会社清算をしたと同時に、当然ながら、多くが掌を反して、それは
それは、怒り心頭の状態に。そこで、長年の知恵が、この裏垢の業! 
これを遣っておくと、精神の根底が崩れてしまう。 …その日の内に、
対象の首を全身全霊を持って、叩き落とす。これで、怒りの三分の二は、
消滅する。後の三分の一は、一週間以内に再フラッシュ時に、全霊を持って
落とす。対象者は、何となく変だが何が起こったのか理解不可能。上記と
同様なことを人生の際で、やっていたことになる。20年近く、毎朝、そして
午前中に、一日一文を書き続けていたのは、書き続ける秘儀があったから。
後で読返すと、何とまあ、そこには、自分であって自分でない得体のしれない
何かを見出す。 

――――
3608, 人生には3つの坂があるというが
2011年02月10日(木)
 以前にも書いたことがあるが、人生には上り坂、下り坂、そして「まさか」
の3つの坂がある。この言葉は大河ドラマの毛利元就の中でも言っていた。 

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