ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■1910, スペイン画家・堀越千秋−2
シラクがパリ市長だったころから、右翼的で尊大で野心的で人種差別主義者的なこの男の顔が
私は大嫌いだった。この手のツラは、スペインにもちらほら、いやこのごろはぞろぞろいる。
特に一九九二年のバルセロナ・オリンピック以後。
スペインは今(一九九五年)、銀行家や警視総監や政府首脳を含む一大汚職にまみれており、
そやつら、亡国的売国的利己的な連中の顔が、スペインの湿った裏庭パリにもいた。
それがシラクである。
誰だい、芸術の国フランス、なんて言い出したのは。
フランスというのは、まず第一に謀略と偽善の国、ですぜ。
そんなこと、イギリス人もドイツ人もスペイン人もイタリア人も、
そしてフランス人自身だって、よーく知ってる。知らないのは、
お人好しの日本人だけだ。
お忘れかもしれないが、日本は、シラクの南太平洋の核実験再開に
抗議する国会決議の文中に「許されざる」という文句を入れるとか入れないとか、
結局入れないことにして、つまり穏便にことを済ませたつもり。
これじゃ絶対にフランスになめられるってことが、少なくともテレビに出て来た
国会議員らの一人も懸念していないところをみると、わかっていないらしい。
そう、フランス人って、キスもうまいけど、人をなめるのもうまいんだよ。
・・・略
そもそも、フランスのワインというのは、スペインから良質で安いワインを沢山輸入して、
それと自国のを混ぜてブレンドしているって知ってた?
(イタリア製ヴァージン・オリーブ油だって、
スペイン産のをびんに詰め替えているに すぎない)
頭脳を全開にして、心を安らかにして、スペインのワインを口に含んでごらんなさい。
フランスワインなんて忘れちゃうから。
そりゃあたくしだってイタリアへ行けばイタリアワインを飲む。
でも、本当においしい肉を食うとき、あるいはラ・マンチャのチーズだけを
肴に夜更けに一人飲むとき、心から欲しいのは、スペインの赤ワインだ。
銘柄? そんなもん何百もあるけど、どれだっておいしいよ。
フランス物はもともとまずいからいろいろ言うのよ。
町の酒屋にずらり並んだビンの中から、まあ五百円以上のものだったら、
あなたが東京のレストランで一万五千円も出したフランスの茶渋みたいな
ワインやら、「さっぱりしてる」水っぽいワインなんかとは比較にならぬほど
芳醇である。 ・・・略
数日後、マドリッドに雨が降った。
プラド美術館の前庭に立派な芝が植わっている。
雨のあとそこを通った友人が、芝が全部枯れているよ!と教えてくれた。
数日後、その友人が、枯れた芝はもう除けられて新しいのに替えられたよ、
と教えてくれた。そのあと、また雨が降ったら、また芝が枯れてしまって、
また植え替えられた、と。
古都トレドに住む友人も変なことを言う。
雨が降ったら、木の新芽がみな枯れてしまった。やがてまた芽は吹いたけれど、
そのあとまた雨が降ったらまた枯れてしまった。それを何度か繰り返した、と。
これはみな、あのチェルノブイリというソ連の原子力発電所の事故の影響らしい。
それからしばらく経ったある日、私の住むアパートの下の入り口に、
マドリード市役所の名で張り紙があった。曰く、
「これから新夏になります。生野菜は腐りやすいので、
なるべく食べないようにしましょう。またもし食べる時は三分以上洗いましょう」
おかしなことをいうな〜、と思った。
ここは、不幸はあんたの勝手、のスペインなのだ。
その年以降、放射能は生物の間を巡って、むしろ濃くなっているという説もある。
せめて、あの、芝や新芽を枯らした死の灰入りのワインは、私やめておきたい。
あるとき、しかし、私はよその家に招かれて、うやうやしく空けられ86年物の
リハオの赤をうっかり飲んでしまった。
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06月26日(月)
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