ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■779, 茨城 のり子の詩
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自分の感受性くらい
ぱさぱさに乾いてゆく心をひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを近親のせいにはするな
何もかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを暮らしのせいにはするな
そもそもが、ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ馬鹿ものよ
・・・・・・・・・・・
根府川の海
根府川
東海道の小駅
赤いカンナの咲いている駅
たつぷり栄養のある
大きな花の向うに
いつもまつさおな海がひろがつていた
中尉との恋の話をきかされながら
友と二人こゝを通ったことがあつた
あふれるような青春を
リュックにつめこみ
動員令をポケツトにゆられていつたこともある
燃えさかる東京をあとに
ネーブルの花の白かつたふるさとへ
たどりつくときも
あなたは在つた
丈高いカンナの花よ
おだやかな相模の海よ
沖に光る波のひとひら
あゝそんなかゞやきに似た十代の歳月
風船のように消えた
無知で純粋で徒労だつた歳月
うしなわれたたつた一つの海賊箱
ほつそりと
蒼く
国をだきしめて
眉をあげていた
菜ツパ服時代の小さいあたしを
根府川の海よ
忘れはしないだろう?
女の年輪をましながら
ふたゝび私は通過する
あれから八年
ひたすらに不敵なこゝろを育て
海よ
あなたのように
あらぬ方を眺めながら……
・・・・・・・・・・・・
わたしが一番きれいだったとき
わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした
わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落してしまった
わたしが一番きれいだったとき
だれもやさしい贈物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差だけを残し皆発っていった
わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った
わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた
わたしが一番きれいだったとき
ラジオからはジャズが溢れた
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05月23日(金)
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