ID:51752
原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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★1・変身劇 影 と 錯 覚
★1・変身劇 影 と 錯 覚
at 2000 05/29 01:25 編集
(1975年の作品なので、幼稚であまりにも恥ずかしい書き方をしているところが多いですけれど、そのまま載せちゃう(*^^*;)
人物 葦山由央(あしやまよしお)
その妻 涼子(りょうこ)
長 男 亮介(りょうすけ)
姪 良子(よしこ)
涼子、亮介、良子は同一人物。
時 知らず
情景 普通の部屋で由央と涼子が仲良さそうに話している。
由央 おまえはいつ見てもきれいだなあ。
涼子 あら…(うつむく)それほどでもないけれども…(ほおを染める)
由央 また、そういうところが好きなんだなあ、ぼくは。
涼子 (微笑みつつ)そういうあなたは、ちょうどアポロンね。お医者で、アーチェリーをやったり、ピアノをやったりするあなたは、ほんとうにアポロン神だわ。……好きよ。
由央 僕もさ…おまえは僕のヴィーナスだ…
――二人、肩を抱きあう。――
暗 転
風景は、殆ど変わらず、只、全部が少しずつ古ぼけている。
あれから、もう二十年経ったのだ。かなり老けた由央が、椅子に深く腰掛けて、やや不安げに煙草を吹かしている。
由央 (独白)私は、あのとき既に何か虚しさを感じていた。あのとき―(目を閉じ)そう。涼子と結婚した、その瞬間からだ!・…それでも、あれが生きている間は、その虚しさも、少しは、…併し、涼子が、私の手によって、息絶えたその瞬間から、…いや、それでも、あれの死顔は、未だ美しかった。…が、涼子の死の瞬間から、私と涼子の間に、憎しみでは無い或る「虚しさ」のような感情があったのを禁じ得なくなって来た。それからもう十年…(首を垂れて暫く何かをこらえる様子。そしてふと頭を上げ、無理に快活そうに)おお、今日は姪の良子が来るんじゃないか!少し頭が弱いが、ピアノだけは上手い子だからなあ。あの子は、今、確か、十五歳だったなあ。
――良子が入って来る(涼子と同一人物、格好と態度が違う。)――
良子 こんにちは。叔父さん、いる?
由央 やあ、良子。相不変(あいかわらず)、元気かい?まあ上がって、ピアノでも弾いて、しゃべったり食べたりしようじゃないか。さあさあ。
良子 おじゃまします。うちのママがね、いっぺんうちにも来るようにって。
由央 ああ、そういえば未だ一度も行って無いね。(独白)美しい娘だ。何処となく涼子に似て…遺伝か何かの関係かな?
良子 叔父さん、何か考えているときの顔、いいわねーえ。
由央 (やや照れる)え?ええ、まあ、うん、いいじゃないか!そうそう、ピアノの弾き比べをやろう。何か弾きなよ。
良子 うーんと…ショパンのポロネーズにしようかしら?一昨日こなしたばっかりだけど。(ピアノのふたを開け、弾きだす。)
由央 (良子の弾くのを見、聞きながら独白)うーん、…何て上手いんだろう。もう、私よりも上手いかも知れない。
良子 (ピアノを弾きながら)ねえ、叔父さん、亮ちゃんは何処に行っちゃったの?あたし会いたいわ。
由央 (少し不安げに)え?私の息子の亮介にか?う〜ん。まあ、そろそろ、戻って来てもいいんだが…(独白)一体、何処で何をしているんだろう?
――良子はピアノを弾き終わり、由央の正面に向かい、まっすぐ由央を凝視(みつ)める。由央は、それを見て、驚いた顔をして、――
由央 あっ?お、おまえは…私の…r、涼子じゃあないか!
良子 (涼子の声で)あなた……!
――二人とも、感慨の表情で見つめあう。――
暗 転
風景は全く変わらない。由央が、驚愕と感慨と不安の混じった顔をしている。髪と服装が、乱れている。
由央 姪のあの顔…あの顔の中に私が見出したのは妻だった。しかも、月の光の中の美しさ、その上、何よりも虚しさが無かった。一体どうしたのだろう?(煙草を一本箱から出して、火を点ける。不安そうに一服)まさか、涼子の霊が憑依していたんでもあるまいし…。
――そこに亮介が現れる。(亮介は、やはり涼子・良子と同一人物。女性が男装をしている)――
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05月29日(月)
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