ID:51752
原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■田中宇の国際ニュース解説(1)
http://blogs.wsj.com/chinarealtime/2010/07/17/a-sea-change-in-us-china-naval-relations/
A Sea Change in U.S.-China Naval Relations?

 実は、黄海を「中国の海」にしたのは、米政府の今回の一回限りの譲歩だけが原因ではない。米国は昨年、中国に対して「米中で世界を二分する覇権体制を作ろう」と「米中G2体制」を提案した。中国は「わが国はまだ発展途上で、そのような体制に参加するには早すぎるし、世界覇権も狙っていない」と断った。だが中国は、G2体制の初期的な第一歩として、自国周辺の台湾、チベット、新疆ウイグル(トルキスタン)という、中国が「国内」と主張する3つの地域「3T」と、東シナ海と南シナ海という、中国が経済水域権(大陸棚)や領有権(南沙群島)を主張する2つの海域において、中国だけが国家主権(覇権)を行使する体制を容認してほしいと米国に求めた。

 米国はこの要求を容認したらしく、中国は今年初めから「3T地域における中国の国家主権を認めない言動に対し、中国は今後容赦なく攻撃し、潰すことにする」と宣言した。同時に中国は、東シナ海(琉球列島の西側)と台湾東部沖、フィリピンの西側、南シナ海(ボルネオ島からベトナムの沖合)をつなげた海域の境界線を「第1列島線」として設定し、第1列島線から中国の海岸の間は、中国の影響海域であり、他の国々の領有権主張や軍事進出、資源探査を許さないという方針を打ち出した。

http://tanakanews.com/100627china.htm
消えゆく中国包囲網

「第1列島線」と同時に、伊豆諸島、小笠原諸島、グアム島(北マリアナ諸島)、ミクロネシアの西側を南下してニューギニア島沖に至る「第2列島線」も制定された。従来、第1列島線の西に位置する台湾までを影響圏にしていた米国は、第2列島線の東にあるグアム島まで撤退し、それと同時に中国が第1列島線の西側のすべてを自国の影響圏として設定し、2つの列島線の間に位置する日本やフィリピン、インドネシアなどは米中の緩衝地帯として機能するという、将来的な米中の影響圏の取り決め構想である。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a1/Geographic_Boundaries_of_the_First_and_Second_Island_Chains.png
第1列島線、第2列島線のの地図

 米国では、中国が2つの列島線の構想を出したと説明されている。だが、G2を時期尚早と断った新参者の中国が、将来的な米中の影響圏の設定を、まだ世界最強の古参覇権国の米国に話を通さず、勝手に独自に設定するはずがない。米国の外交戦略を考案する奥の院である「外交問題評議会」が発行する雑誌「フォーリン・アフェアーズ」は今年「米国が第2列島線まで後退し、中国が第1列島線まで進出してくるのは、不可避のことだ」と主張する論文を載せている。2つの列島線は、米中が合同で話し合って決めたものに違いない。

http://tanakanews.com/100623japan.php
米中は沖縄米軍グアム移転で話がついている?

 東シナ海の奥に位置している黄海は、第1列島線の西側にある。上記の米中影響圏の構想に基づけば、黄海は今年から中国単独の影響圏(覇権海域)である。米国(などあらゆる外国勢)が黄海に勝手に入って資源探査したり、無断で空母を航行させることは、米中の了解事項に反する。米軍が空母を黄海に入れなかったのは、第1列島線をめぐる米中の取り決めに沿っている。


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08月17日(火)
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