ID:51752
原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
[140334hit]

■田中宇の国際ニュース解説(2)
続き、その1。

▼南シナ海でも中国の激怒を誘う米国

 3月末に天安艦が沈没したのも黄海だから、中国の影響圏の海である。天安艦の沈没当時、米韓はこの海域で、北の潜水艦の潜入を想定した軍事演習をしていたが、中国軍はその様子を150キロ離れた対岸の山東省などから観察していたはずで、中国は誰が天安艦を沈没させたか把握しているはずだ。当日は、韓国の潜水艦が「鬼」(北朝鮮の潜水艦の役)をして、他の米韓軍の艦船が鬼を探し出す、鬼ごっこ的な軍事訓練をしており、米韓軍の艦船はちゃんと鬼の探知に成功していたと、AP通信が6月5日に報じている。本物の北朝鮮の潜水艦が近くにいたら、米韓はすぐに探知できる状況だった。「なぜか探知できなかった」という韓国政府の説明はウソだ。

http://wire.antiwar.com/2010/06/05/ap-enterprise-sub-attack-was-near-us-skorea-drill/
Sub Attack Was Near US-South Korea Drill

 米国は、昨年秋に中国が黄海を影響圏にすること認めた後になって、今年3月に起きた天安艦の沈没を濡れ衣で北朝鮮のせいにして、それを口実に米韓軍が黄海で北朝鮮と戦うことも辞さずという態度をとった。このように、いったん「貴国の影響圏です」と言っておいて、その後になって、そこで戦争を扇動する米国のやり方は、中国を怒らせるものだった。

 米国は、第1列島線によって中国の傘下に入ることを認めた他の地域でも、あとから中国を怒らせる言動をしている。その一つは、オバマ政権が今年1月末、台湾に武器を売る話を蒸し返し、米議会に対し、台湾への64億ドル分の武器売却を建議したことだ。中国側は激怒し、米国との軍事交流を全面的に凍結した。5月末、米国のゲーツ防衛長官が中国訪問を希望したが、中国側に断られている。

http://www.breitbart.com/article.php?id=CNG.eba0f1f44dc56eaae2cdf53db03b2f4e.661&show_article=1
China protests US arms sales, warns of 'serious' impact

http://www.reuters.com/article/idUSTRE6511ZH20100602?loomia_ow=t0:s0:a49:g43:r1:c0.237995:b34562050:z0
China delays Gates trip in apparent snub for Taiwan

 もう一つは、南シナ海の南沙群島の領有権問題で、7月25日に米国のクリントン国務長官が、ベトナムで開かれたASEAN地域フォーラム会議の席上「南沙群島の問題が平和的に解決することは、米国にとって重要な国益だ」と発言したことだ。南沙群島は南シナ海の小島群で、中国のほか台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが、全部ないし部分的に領有権を主張している。米中影響圏の第1列島線は、南シナ海の南沙群島をすべて取り込んで中国の傘下(領土とは限らないかも)に入れるべく、U字型に引かれている。

http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2010/07/26/2003478838
Chinese foreign minister warns US on South China Sea

http://en.wikipedia.org/wiki/Spratly_Islands
Spratly Islands From Wikipedia

 中国は02年にASEAN諸国との間で、南沙群島の領土問題を平和裏に解決する協約を結んだ後、東南アジア諸国と個別に交渉し、経済協力と引き替えに、南沙群島における中国の影響力拡大を模索してきた。クリントンは、そこに横やりを入れ、この問題でASEANが団結した態度をとって、中国と交渉し直すべきだという新たな構想を打ち出した。これまで中国との個別交渉で弱い立場に置かれていたASEANを団結させ、強化するのが米国の狙いだ。中国は、南沙群島を含む第1列島線の内側の地域と3Tを「中核的国益」と呼び、この呼び名がキーワードとなっているが、クリントンは「南沙群島問題の平和的解決は、米国にとっても『重要な国益』である」と発言し、あえて中国と対決する用語使いを放った。

http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703700904575391862120429050.html
Reining in China's Ambitions


[5]続きを読む

08月18日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る