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原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■医師に協力してもらうための当事者の心得 改名申請の心情陳述書
現在の私は、一見して男性よりも女性に近い姿です。それなのに、名前が「章」という男性名では周囲に対して無用の混乱を招くと思います。
いっとき、「章」と書いて「あや」と読んでもらえればいいかもしれない、と思ったことがありました。
けれども、実際にはそのように読んでくれた人に出会ったことはなく、けっきょく「章=あきら=男性名」という社会通念のような認識で見られてしまいます。
そのことは、本来ならば全く必要のない場面で、私の「性別」についていちいち説明しなくてはならない、という苦痛をもたらします。
せめて女性名に多く見られる「香」という字をつければ、そうした煩瑣な説明をいちいちしなければならないことも少なくなると思います。
幸い、現在の職場、また中学・高校・大学の頃からの友人たち、その他今お付き合いしている知合いからはほとんど「章香(あやか)」という名が通るようになっていますし、家族(兄・姉・弟)も徐々に私を「章香」と呼ぶようになってきました。
(郵便物など使用実績にあたる書類をご参照ください)
 ただ、これから先、社会生活を送るにあたって、戸籍に残っているせいで男性名である「章」と呼ばれることがあるのではないかと思うと、今以上の就職活動をするのも怖くなってしまいます。
 戸籍上にその名前が残っている以上、そちらで呼ばれてしまう場面は、たとえば役所や銀行、それらの機関で発行した書類を使用する場所など、まだまだあると思うと、社会生活が安定して送れるとは思えないのです。
 実際、現在アルバイトしているコンビニエンスストアでは、名札では通称名の「章香」と記載してもらっていますけれど、名札と給与振込みの宛名をコンピュータ上で連動させる方式をとっているため、通称名で口座を開設できない郵便貯金への給与振込みができない、という事故がおきました。
店長さんのご厚意で名札はそのままにしてもらいましたが、従業員登録上は現在の戸籍名のままなので、名札と登録の間に齟齬がある状態で勤務しており、そんなつもりはないのにある意味「不正」を行っていることになってしまうのが、精神的に苦痛です。
 (添付のコンビニエンスストアの名札と給与振込みの通帳をご参照ください)

「今回改名を申し出た 直接の理由は何ですか?」
 今後、今よりも多くの給与を得られるために再度就職活動をしようと思っていますけれど、戸籍の名と異なる名を履歴書などに記載すると、「虚偽の記載」ということになり、求人状況が良くない現状では、採用は決してされることがないだろうと思いました。
 繰り返しになってしまいますけれど、私は真っ当な社会生活を送りたいと思っています。
 そのためには、通称名と戸籍名が一致していることが望ましいと思い、改名を申し出ることにしました。

「その他今回の申し立てに関して参考になることが在ればお書き下さい」
1.
 「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」というものがあります。
(別途添付のガイドライン文書をご参照ください)
 私は全てそれにのっとって診療を受けたわけではありませんけれど、今年になって改訂されたものを見ると、私のようなケース(過去に結婚歴があるとか、治療の段階を順序を変えて行っているとか)でも診療の門戸は開かれている、ということになりましたし、実際に私が受けた診療は、当該ガイドラインを意識し、できるだけそれに沿ったかたちで受けています。
 診療のおかげで、少なくとも私は日常的に女性として生きるほかはありませんし、そのことをとても安定した幸せなこと、と感じています。
2.
 私には結婚歴があり、子が一人います。ただし、2年前に離婚し、子は私でないほうの配偶者だった人が引き取って育てています。
 以前は「父親が性転換者」などということが知れ渡るとそれだけで差別やいじめの口実になりましたけれど、昨今の性同一性障害者を取り巻く状況は、当事者や周囲にとって望ましい状況へと好転しつつあります。

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04月11日(木)
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