ID:51752
原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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由央 (諦めた微笑を顔に浮かべ)結局、今迄のは皆、夢なのか…ふふっ死刑になって、涼子のところに行くんだ。はははっ!(急に沈み込んで)併し、残された亮介はどうするんだろう。それだけが心残りだが…。思えば、亮介は、涼子に酷似していた。一言で「酷似」と言ってしまえる程、酷似していた。それが災いのもと…ふふふっ家出…か。あれっあのとき、涼子は未だ生きていたのか?…いや、死んでいた…のか?それだけ全く忘れてしまった!いや、待てよ?亮介の家出とともに、涼子の姿も見えなくなって…そうだ!今、見えたぞ!妻の涼子も、息子の亮介も、同じ人間だったんだ!…はて、それにしては…涼子が亮介を抱いてあやすのも見た、食事にはいつも三人分の食事が、いつも、揃っていた。なのに…いつの間にか、合体でもしてしまったのだろうか…?莫迦な!人間だぞ、二人とも。併し、妻と息子は一人になってしまった。或る時は妻で、或る時は息子で…………どちらが仮面で、どちらが実物なのか?確か…?

――監守が鍵を開けて入って来る。――

監守 おい、出ろ。面会人がいるぞ。
由央 誰が?
監守 さあね、ご婦人だがね、美人だぜ。歳はおまえさんと同じ位いかね、おまえさん、歳の割には老けてるからなあ。
由央 思い当たらないが…行ってみればわかるかも知れない。(監守に伴われて、面会室へ行く。)
面会人 あなた。
由央 わッ!…一体、一体、どういうことなんだ?
涼子 (穏やかな目で夫を見つめ、)あなた、残念ね。死刑なんでしょ。実を言うとね、あなたの殺したのは只の「影」だったのよ。実物はここにいるわ。
由央 何ということだ!「影」殺しで死刑とは!…ひとつ、尋(き)きたいことがある。亮介はおまえの子だったんだろう、何時合体したんだ?
涼子 ああ、あれはあなたの錯覚よ。それじゃ、さようなら。(去る)
由央 (首を垂れて暫く何かをこらえる様子。そしてふと頭を上げ、無理に快活そうに)ふふっなんだ、欺かれていただけか。(涙を流しながら微笑み)大したことじゃなかったんだ。つまんねえ一生だったなあ。(監守に振り向き)監守さん、意向よ。あの、俺を幸福(しあわせ)にしてくれる死刑台へ。俺を解放してくれる、あの十三段の階段のところまで、一緒に行こう。

――由央、監守に伴われて死刑台へ向かう。――


    幕



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(2000年の後日談)
中学生でした。
できるだけ人が読んでも分からないように、心がけていましたが、今読むと、「意図」が見え見えですよね(^^;

それにしても、「家族機能研究所」のどなたか、この戯曲を「分析」してくれないかしら?
そういう点でも、(まさか当時は思いもよりませんでしたが)「見え見え」じゃないの!

あー疲れた。

読んでくださった方、本当にありがとうございました。
めちゃくちゃ退屈で、めちゃくちゃ恥ずかしい内容なので、どうか他ではこのことについては言わないでね。


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05月29日(月)
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