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原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■本当のことって〜音楽とコンプレックス
わたしはそのことに全く気づかず、彼女は強くて無謬(常に正しい)の人だとしか思っていなかったから、わたしからすれば全くなんでもないことなのだけれど、彼女にとっては傷つけられることになるようなことを、わたしはいろいろ言ってしまっていたのだろうと思う。
たとえば……
わたしは4年制の大学に通っていた。
けれど彼女は、志望する大学は落ちてしまい、専門学校に通っていた。
わたしはそんなことにこだわる必要なんかない、と思っていたし、彼女が専門だからといって見下した覚えもない。
でも、きっと「こだわらない」だけではだめなんだろう。
むしろ、そのことにこだわって、気を遣って扱うようにしてあげるべきだったのかもしれない。
それに、たとえば……
わたしは自分の父親は大嫌いだったけれど、父親の職業はとても尊敬していた。
その裏返しで、ふつうのいわゆる「サラリーマン」という職業については、……これは明らかに「見下していた」と思う。
ひょっとしたら今でもそうかも?
いやいや、そうではない。
他人が会社や役所などの組織に入ってその一部として働くのは、ぜんぜんかまわない。
というか、わたしだってサラリーマンやったことはあるので、そういう立場で働くことがどれほど大変かはわかるし、そうやって組織の一員として働くことに誇りも幸せもある、ということだってわかる。
ただ、わたしには結局「向いていなかった」。
あ、そうか。これも裏返しのコンプレックスで、葡萄の実に手が届かなかった狐が「あの葡萄はまずいんだ」とうそぶくのと同じなのかも。
わたしは、就職ができない人。
しても、ぜんぜん長続きさせることができない人。(最長6年)
……かといって、自営業を自分で営むなんていうセンスも能力も、ない。
わたしは人並みにちゃんと働いて、自分にかかるお金くらいは自分で稼ぐ、ということがまともにできない人。
そう思いながらも、彼女と一緒に暮らし、子どもができてからは子どもの分も何とかしていくために、わたしは合計10年ほどは「サラリーマン」として生きた。
「向いていない、できない」と思いながら。
結局、壊れてしまったわたし。
お金がなくなって生きていけなくなるのも怖いけれど、どこかの組織に入り込んで壊れるまで働くのも、怖くてできない。
(ていうかそれ以前にわたしみたいなひどい人間を雇ってくれる会社なんかこの世に一つもありませんから〜 残念〜〜!<もう古いよね)
その裏返しで、「サラリーマンなんて」と見下すような態度をとったわたし。
そのまた裏返しで、そうやって見下される範疇に自分の父親も(もしかしたら自分も?)入っていることで、わたしからコンプレックスを植え付けられた、彼女。
今思うと、なんてくだらないことをやっていたんだろう。
……音楽については、どうなんだろう?
学生時代には、実は貧弱な根拠しかないのだけれど、音楽についてだけは妙なプライドがあった。
「自分はうまいんだ、自分の音楽のセンスは良いんだ」と。
ええと……
なんだか、書いていることが微妙に間違っているような気が。
音楽についてのプライドも、実は「正規の音楽教育を受けていない」というコンプレックスの裏返しだったのかも。
でも、実は関係ないんだよね。
売れてるミュージシャンがみんな音大卒、なんてありえないし。
いやそれはわかっていて、その上で「理論知らなくても先生についてなくても、自分がいちばん!」と、昔は思っていたのではないか。
今は、どうなんだろう。
わたしよりもずっとセンスの良い若い子がいっぱいいるし、わたしが途中で音楽やらなくなってしまっているうちに、しっかりと活動を積み重ねてすばらしい音楽を創り出しいる人もいっぱいいる。
比べたら、勝てない。
……音楽は、勝ち負けじゃないんだよね。
誰も認めてくれなくても、わたしにとってベストになれば、それでいい。
「正しい音程」とか「正しいリズム」とかいうのは、ちょっとした礼儀でしかない。
しかも、そういうものだって必ずしも必要とは限らない。
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07月05日(火)
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