ID:41506
江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■筋肉痛の悲劇


 オレは銀行に行く用事があった。ATMではなく、営業時間内にしか使えない両替機を使いたかったからである。この両替機なんだが、ただのキャッシュカードしか持たない零細顧客に対しては「10枚しか両替できない」というひどい仕組みが存在する。そういうわけで年末にお年玉用に両替しなければならない時はどうすればいいのだろうかと今からオレは心配しているのである。さらにもう一つの悩みだが、日本銀行券の切り替えに伴って今は新券の供給が抑えられているらしい。もしかしたら来年のお年玉は旧札であげないといけないかも知れないのだ。親戚の多くの子たちにお年玉を配らないといけないオレは頭を抱えている。

 銀行の駐車場は短時間だが無料サービスがある。しかし、時に満車でクルマを置けないこともあるため、オレは面倒だが職場にあった自転車を借りて行くことにした。これなら「駐車場に置けない」という無駄足も、たかだか両替のために駐車料金を払うというもったいないことも回避できる。それでオレは自転車でUFJの支店に向かったのである。

 ところが駅前にあるそのUFJの駐輪場はいっぱいだった。自転車でさえも置けないことがあるのだ。オレは自分の読みの甘さを痛感したのである。それでしばらく待った。ほどなくしてATMコーナーから出てきた人がいて自転車を出したのでオレはそこに駐めたのである。

 目的を達成してからオレは自転車の所に戻った。すると隣が大きく二台分空いていた。タイミングだよなと思いつつ、自転車の鍵をあけていると、その2台分のスペースにはスクーターが停まったのである。なるほど。スクーターもここを利用するのか。

 ところがそのスクーターから降りた中年女性は、スタスタと銀行とは真逆の方向に歩いて行ったのである。なんということだ。貴重な駐輪場はこのようなふとどきな人たちのために埋まっていたのである。オレはかなり腹が立ったのである。こんな迷惑な人からは罰金でも取ってやれよと思ったのだ。

 オレは職場に戻るために自転車にまたがった。しかし、大阪市内とはいえ少し上り坂になっている。オレは気合いを入れてペダルをこいだ。最後にかなり急な坂があった。しかし自転車を降りて押すわけにはいけない。電動アシストのない自転車では少しきつい坂をオレは立ちこぎでぐいぐい上って無事に戻ってきたのである。元サイクリング部員として、いくら坂道が急だとしても通常の道路で降りて押すなんてことはそれこそ沽券に関わるのである。どんなにきつくても歯を食いしばって頑張らないといけないのだ。

 夕方になってからオレは少し太ももに違和感を感じた。無理に立ちこぎまでして頑張ったことが何らかの影響を与えたことは間違いなかった。翌朝になってさらに筋肉痛はひどくなっていた。ああ、オレはいわゆる「年寄りの冷や水」という愚行をしてしまったのだ。もう自分は若くはないのに、老いた肉体に過酷な運動をさせてしまったのである。

 オレは老後のトレーニング用に電動アシスト自転車を買おうと思っていた。高価なeクロスバイクを手に入れれば、峠道で軟弱な連中をぶっちぎれると思っていた。しかし、その前提となる自分の足腰がもう完全にボロボロになっていたのである。

 大阪市内の軽い坂道でさえ苦しむ自分が、かつてのようにハードな峠道を走れるわけがないのである。オレの考えは甘かったのである。オレは筋肉痛の足をさすりつつ、無理な運動は控えないと・・・と思ったのであった。


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10月29日(日)
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