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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■維新政治家はなぜウソを言うのか?




 日曜日の朝、オレはNHKの日曜討論を視ていた。そこでは岸田首相の「異次元の少子化対策」ということが話題になっていたのだが、維新の会の藤田幹事長はそこでこのような発言をしている。これがその全文書き起こしである。

児童手当に限らず、この所得制限という、給付における所得制限というのは我々はずっと一貫してなくすべきだというふうに言ってきましたので、この方針の転換については賛同します。で、大阪ではですね、行財政改革を徹底的にやって、財源をまあ、10年間ぐらいにわたって積み上げてきて、あの、切り盛りしてですね。保育、幼児教育、そして高等学校も含めて無償化、そして今度、大学、大阪公立大学の、まあ大阪に住んでらっしゃる方だけですけれども無償化というところまで来て、いわゆる0歳から大学までの高等教育の無償化というのは大阪限定ですが実現しました。これを全国でやりたいんですよ、やっぱり子供にかかるお金というのはいかに下げていくかということについては非常に重要で、特にですね。いろんな取り組みはやってきたけれど、結果、この30年、出生率というのは改善されず、出生数というのは下がり続けている。これを歯止めをかけるために、やっぱり大きな手を打たないといけないと、このように思います。

 突っ込みどころ満載なのであるが、まず藤田は「給付における所得制限というのは我々はずっと一貫してなくすべきだというふうに言ってきました」という部分だが、ここは事実に反している。公立高校の授業料無償化というのは民主党政権時代の2010年に実現したが、2013年に自民公明維新が「余裕のある人まで無償というのはおかしい」と主張して所得制限を導入したのである。

 もちろん所得制限をなくすことに対してオレは賛成だ。しかし維新はかつてそれを導入する側に回っておきながら「ずっと一貫して」と主張するのは卑怯である。全然首尾一貫していないのである。恥知らずである。

 そして問題はここである。「いわゆる0歳から大学までの高等教育の無償化というのは大阪限定ですが実現しました」という部分だ。単純にこれを聴いた人は「大阪スゲー、維新スゲー、全部無償なんや!」ということになるが、事実は全然違うのである。

 大阪でのこの「無償化」というのは全国でも他に例を見ないほどの厳しい所得制限が存在する。私立高校の無償化対象になるのは世帯年収590万円以下という制限があり、夫婦共働き家庭の多くがこの制限を超える。そういうわけで大阪で私立高校の授業料無償化の対象になってる世帯は全体の4割しかない。ちなみに東京都は世帯年収1000万円以下が無償化対象である。東京都に比べてはるかにショボいのが大阪の「私立高校無償化」なのである。

 維新政治家が全国で街宣するとき、この「大阪は無償化を達成した」というウソがもれなくついてくる。たとえば尼崎市長選挙で維新公認候補だった大原隼人は「大阪では私学は無償なんですよ。所得制限なしにタダで行けるんですよ」と発言していてその動画も多くの方が保存している。どうしてそんなウソを堂々と言うのだろうか。

 2021年の衆院選の時に維新候補や吉村洋文は「大阪では私学の完全無償化を達成」というウソを言いふらした。このウソはかなり有効だったようで、維新に投票した多くの人がその理由として「維新は教育政策が優れている」とあげていたそうである。今の日本の法律ではこのようなウソは処罰の対象ではない。橋下徹はその著書で「騙される方が馬鹿」とはっきり書いている。つまり、有権者はいくら騙してもいい。騙される方が馬鹿なんだからというのが、彼らの中心思想である維新スピリッツなのである。

 維新の会の目的はただ一つ、「党勢拡大」である。この言葉を彼らはよく口にする。住民の暮らしをどうするかなんてまるで考えてない。それはコロナ死者日本一、全国学力テスト最下位、児童虐待発生件数日本一、高校生の不登校生徒数日本一、交通事故死日本一などを達成していることから明らかである。彼らには行政能力そのものが欠如しているのだ。彼らにとって「選挙」というのはSLGの「信長の野望」と同じくただの国盗りゲームなのである。


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01月29日(日)
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