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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■世襲議員と既得権益
日本は世襲議員が多い。これは自民党だけではなく野党議員にもいるし、維新の会も同様である。逆に世襲議員がいないのは共産党やれいわ新選組などである。世襲議員というのはつまり、その一族の家業が「政治」であり、もしもその中心となる「政治家」を失えば収入源が断たれるということなのである。岸信介の孫である安倍晋三や岸信夫などは典型的な世襲議員であり、後援会やその周辺の人々は政治家一家に寄生して生きているのである。
「桜を見る会」の前夜祭のさまざまな問題が「秘書の責任」とされ、秘書はクビになったという形式を取ったが、しばらく経つとその秘書は復帰していた。これまで政治家一族に寄生していた秘書にしても仕事がなくなるのは困るわけで、この世襲政治家というのは一つの利益共同体みたいなものである。だから議員という仕事が辞められないのだ。
維新の会の梅村みずほ議員の秘書だった成松圭太という男が、車で人をはねて殺そうとして殺人未遂で逮捕されたが、どういうわけか不起訴処分となった。被害者が脅されて被害届を取り下げたとしか考えられないが、成松圭太は維新の会の有力者の娘婿であり、いずれ議員として立候補させる予定の人物である、この殺人未遂事件も「なかったこと」とされてしまうのだろう。政治家一家という既得権益を守ることが最優先なのである。
自民党の世襲政治家たちにとって最大の危機はやはり「政権交代」である。かつての自民党は党内派閥をいくつも作り、その派閥の中で総理を回していくという方法で「疑似政権交代」を作り出してきた。こうすれば不祥事の度に他の派閥に政権を譲り渡すことで国民の目をうまくごまかせたのである。田中角栄がロッキード事件で辞めた後、三木武夫という「クリーンそうに見える」政治家を首相に起用したことなどがまさにそれである。
自民党が長期政権を盤石にして組織票だけで永久に政権政党の座にいられるようにと導入した「小選挙区制」でまさかの敗北を喫した時が自民党にとって本当の危機であった。もしも鳩山由紀夫という空気を読めないお坊ちゃんがもっと長く民主党総裁だったならば、自民党は壊滅していたかも知れない。しかし自民党の破壊工作は成功し、とりあえず首相を菅直人というボンクラにすげ替えた。そして菅直人に失敗させて今度は野田佳彦という工作員を首相に据えた。案の定野田佳彦は期待を裏切らず、「そんなことをしたら必ず負ける選挙方針」で戦ってくれたのである。自民党は政権政党に復帰し、二度と政権交代が起きないように民主党を巧妙に分裂させて解体に追い込んだ。
民主党政権下でやはり焦っていたのは統一教会である。せっかくアベ一族を支援して日本の政治の中枢を支配できると思ったのにそれが頓挫した。自民党に代わりうる壺政党の創設が急務である。そこで目を付けられたのが笹川良i一と関係が深かった松井一郎という大阪府議である。統一教会は松井一郎の父を大阪府議会議長にするなどかなり以前から大阪支配を巧妙に進めていた。野党のふりをして政権批判票の受け皿になる「自民党のスペア」として維新の会は作られたのである。これには大阪の自民党の国会議員、地方議員のかなりの者が加わったが、そのほとんどが世襲議員だったことを思えば維新の会の性格がよくわかる。維新の会というのは、世襲議員たちの既得権益を守るということだけが目的であり、住民の生活などどうでもよく、自分たちがいつまでも議員という仕事を続けられるかどうかが最大の関心事だったのだ。
維新の会の連中の主張はいつも「既得権益打破」である。でも、実は彼らこそが「既得権益者」なのであり、世襲議員という既得権益を享受している張本人なのだ。泥棒が「盗みは良くない」と語り、殺人者が「人の命は大切だ」と叫んでることと同じ欺瞞が底に存在するのである。
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11月24日(木)
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