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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■そのゴキブリを殺せ!
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 わが家には多くのゴキブリが棲息している。なぜこんなに多いのだろうかと思うが、古い日本家屋なのできっと隠れ場所がたくさんあるからなんだろうとあきらめている。それに輪を掛けてゴキブリが多いのは、オレの妻がゴキブリ退治に対して全く情熱をもっていないからである。それどころか、オレがゴキブリを目の前で殺害すると怒るのである。床にいるゴキブリをスリッパで撃ち殺すと、当然のことだが床にはゴキブリの体液が付着することになる。それが妻には耐えられないということなのだ。どうしてそんな場所で殺すのか!と妻は怒るのである。つまりわが家ではゴキブリを殺す時に部屋を汚さないで殺すという困難な課題が伴うのだ。数日前もまな板の上でまな板を舐めているゴキブリを発見したが、そこで殺したらおそらく妻はそのまな板を捨てるだろう。オレが打撃をためらった瞬間にゴキブリはすばやく逃走して、食器棚の後ろの空間に入り込んだのである。そうなるともう手出しできない。そうしていつも取り逃がすのである。

 もちろん、ゴキブリホイホイという便利なものが市販されていて、それを仕掛けるとゴキブリはいくらでも捕獲可能である。しかし、妻はそのゴキブリホイホイを嫌うのである。それは、そこにゴキブリが捕まってるという事実を妻が嫌うからだ。ゴキブリ捕獲装置とはすなわち、ゴキブリ誘因装置であり、それが妻にはどうも許せないらしいのである。だったらどうすればいいのか。ゴキブリを見つけたときの妻の反応は「逃げる」である。

「一匹いるということは100匹隠れてるということ。今一匹殺したところで全体の数にはたいした違いはない。だから殺しても無駄!」

というのが妻の理屈である。しかしオレは「その一匹を逃がせばまたそこから繁殖して増加する。一匹ずつでも殺し続ければいつかは減らすことが可能だ!」と思っていて、いつも妻とは意見が対立するのだ。

 深夜にちょっとコンビニに行こうと思い立って勝手口から出ようとすると、自転車置き場の足元にゴキブリが出現する。オレはとっさにそこにあった妻のサンダルをつかみ、それを地面にたたきつけてゴキブリを殺害する。目の前にある無惨なゴキブリの死骸をそのまま放置する。朝になって、妻がその干からびたゴキブリの死骸を目撃して「きゃあ!」とか叫ぶ様を想像してオレはわざとその死体をその場に遺棄するのである。まさか妻もその殺害行為に自分のサンダルが使われたとは思いも寄らないだろう。もしもそれを知ったら二度とそのサンダルを履かないだろう。だからこのことは言わない方がいいのである。そのサンダルはゴキブリ叩きにちょうどいい軽さと、裏側の平面部分を持つのである。

 ついさっき、オレは大便のためにトイレに入った。洋式便器に腰掛けてふと扉を見るとそこにゴキブリがへばりついていた。もしもドアをのんびり開けたらそいつはトイレから外へ出ていただろう。いや、なぜそこにゴキブリが存在するかなのだが、実はわが家のトイレの壁と床下の間には2ミリほどの隙間があって、そこからゴキブリたちは出入りしてるようなのである。屋外からわが家に侵入するために開口部がそこに存在するのだ。


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09月23日(火)
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