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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ハメこまれた人たち18(日本航空2)
オレは11月1日に映画館で「沈まぬ太陽」を観た。映画の中では「国民航空」という航空会社が登場するが、これが日本航空をモデルにしていたことは誰の目にも明かである。そして見終わった観客の誰もが「だから日航はダメなんだ」と思ったに違いない。オレもその一人だった。しかしオレは日本航空株を空売りする勇気はなかった。過去に何度か破綻寸前の会社を空売りして、土壇場でTOBなどで逆転された苦い思い出があったので、どうしても空売りには慎重になっていたのである。もしも政府が救済するということになればたちまち株価は回復すると思っていたし、それは最後まで逃げ遅れた日本航空の個人株主たちも同じ気持ちだっただろう。
日本航空の大株主たちの撤退も進んでいた。三井物産は保有していた約1100万の日本航空株を9月までに売却していた。機関投資家は株価が100円を切れば機械的に損切りすると言われている。沈む船からどんどん大株主が逃げだし、市場で売却された株は再建を期待する個人投資家が拾っていたのだ。もはや日本航空の法的整理は疑いないという状況で2009年は暮れたのである。また、空売り残が膨らんだために日証金は1月4日からの日本航空株の貸し出し禁止(空売り禁止)という規制を発表した。個人投資家は新規の空売りができなくなったのだ。
さて、年末に空売りを入れた個人投資家たちはそれこそ「倒産を寝て待つ」つもりでいたはずである。60円台で空売りしてしまった人たちも大勢居たのだ。会社更生法を申請して上場廃止となれば株価は1円くらいまで下がる。しかし、最後のどんでん返しがまだ用意されていた。オレが今日の日記を「ハメこまれた人たちシリーズ」に入れたのはこの最後のどんでん返しがあったからである。なんと、大発会を翌日に控えた1月3日、政府は日本政策銀行による日本航空向けの融資枠を1000億円→2000億円と倍に拡大したのである。これは企業再生支援機構が支援決定するまでの「つなぎ融資」の性格を有していた。市場はこのニュースに反応したのである。
1月4日大発会の寄りつき、大量の買い注文が発生したために日本航空の株価はいきなり特別買い気配となった。大納会の終値67円に対して、92円(+25)で寄りついたのである。その後93円まで上昇したがそこからはじりじりと値を下げて結局88円で引けた。この日、6000万株の空売り残のうち、3000万株が返済されている。中には60円台で空売りを入れて泣く泣く90円台で返済買いさせられた方も居たはずである。大損である。なぜこんな悲劇が起きたのか。なぜ空売りした人たちがビビって返済してしまうような異常な値動きが起きたのか。これこそがオレのもっとも忌み嫌う「個人投資家のはめ込み」だったのである。
個人投資家を巻き込んで日本航空株で最後の一稼ぎをしたいという大手証券会社や大株主たちの利害は一致した。12月中はとにかく悪い材料を出しまくってどんどん個人投資家に空売りさせてとことん下げさせておき、正月休みの間にだまし上げの材料を出すことを決めておいて大納会ではこっそりと仕込んでおき、強烈な買い気配におびえた空売り個人が泣く泣く損切りして返済買いするところに機関投資家や日本航空株を処分したがっている大株主の売りがぶつけられたのである。それは寄りついてからたった1円しか上がらずに沈んでいった4日の値動きからも想像できる。1月4日は個人売り方の撤退戦に機関投資家の処分売りがぶつけられるという攻防だったわけである。
「会社更生法を申請しても上場は維持される」「優待はそのまま残る」などのガセネタ報道に守られて翌5日には2円上昇して90円台を回復した。しかし、上昇もそこまでだった。6日からはじりじりと株価は下げ続け、1月8日の終値は奇しくも大納会と同じ67円だった。株価は振り出しに戻ったのである。しかし、そのあたりで逃げ切れた日本航空株ホルダーはまだ幸せだったのだ。その後の地獄を見ずに済んだのだから。
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01月14日(木)
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