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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■「永井豪記念館」はなぜ失敗したか・・・
水木しげるの代表作といえば誰もが「ゲゲゲの鬼太郎」をあげるだろう。オレもそれに対して異論はない。だったら手塚治虫の代表作は何か。 「ブラックジャック」ともう一つは「鉄腕アトム」になるだろうか。宝塚市にある手塚治虫記念館に行けば、ちゃんとそれらのマンガに関する資料が展示されるが、他のマンガに関しても詳しく知ることができる。オレは水木しげる記念館にも手塚治虫記念館にも行ったことがある。だがそのお二方よりもはるかに永井豪の方が好きだ。だからこそ「永井豪記念館」はそれら二つの既存の施設にはないような斬新で型破りなモノにして欲しかったのだ。原画の展示などという廃物利用でお茶を濁すのではなくて、たとえば童心に返ってスカートめくり体験ができるという「ハレンチ学園実体験コーナー」や、ウエイトレスがみんな全裸で顔だけ隠しているという「けっこう仮面体験カフェ」などの驚愕の内容にしていればよかったのである。だったらオレのような変なおっさんがわざわざ大阪からクルマを飛ばして来てくれるのである。
永井豪の作品には実験的なモノが数多くある。宇宙人の中に想像される人種差別を描いた「スペオペ宙学」や、不潔さの極致を描いた「オモライくん」など教育上かなり問題のある作品も多い。だからこそオレはその作品世界を愛するのである。オレは永井豪の熱烈なファンである。オレをその記念館の館長として年俸3000万円くらいで引っ張ってくれるならば、そしてすべての企画をオレに全面的に任せてくれるならば、必ずオレは人気施設にしてみせる。観光客も年間に100万人くらい集めてみせる。ただ、そのためにはかなりの冒険が必要だ。そして地元民はおそらくその冒険を受け入れることはできないだろう。そう考えれば、最初から「永井豪記念館」など作らなくてもよかったのである。
もしかしたら輪島市民は、永井豪のマンガの本質を「愛」や「正義」であると勘違いしていたのかも知れない。その勘違いのおかげでこの企画はスタートしたのかも知れない。もしもその本質が「エロと暴力」であることを最初からわかっていれば企画は通らなかっただろう。
永井豪は戦後日本の生み出した最高のマンガ家であるとオレは思っている。「少年ジャンプ」がメジャーになれたのは「ハレンチ学園」のおかげだし、「少年チャンピオン」の歴史は「あばしり一家」なしには語れない。それらの少年マンガ雑誌が多くの読者を獲得して成長していく過程でこの両作品の果たした役割は極めて大きかった。ただ彼が「バイオレンスジャック」を描いた時、時代はまだそこまで追いついていなかったのだ。「バイオレンスジャック」の世界観が理解されるのは後年の「北斗の拳」の登場を待たなければならなかった。
無修正のエロ画像がいくらでもネットで閲覧できる今日、小学生や中学生にハレンチ学園の古本を見せたとしても彼らはなんの感動も覚えないだろう。しかし、まだエロ本というものをよく知らなかった少年時代、オレが永井豪のマンガから受けた衝撃は忘れられない。あの頃の男の子たちとってまぎれもなく永井豪作品は性の伝道師としての大きな意味を持っていたのである。そのことを理解せずにただの「街おこし」の安易な感覚で中途半端な記念館を建てても失敗するだけである。税金を使ってハコモノを作ったとしても、その中味をどうするのか・・・企画した側が永井豪の作品の本質をろくに理解していなかった点で、「永井豪記念館」に客が来ないのは当たり前なのである。商売を知らない行政の連中が思いつきでやることはしょせん失敗に終わるのである。
推薦図書
ハレンチ学園 第1巻 (キングシリーズ 小池書院漫画デラックス)
永井豪ショッキング・エッチコレクション (KCデラックス)
永井豪作品全書―永井豪クロニクル
永井豪エッチまんがセレクションZ (SPコミックス)
けっこう仮面 2 新装版 (SPコミックス)
けっこう仮面ショッキングエッチコレクション (KCデラックス)
バイオレンスジャック―完全版 (1) (中公文庫―コミック版)
デビルマン 愛蔵版 (KCデラックス)
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05月26日(火)
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