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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■ファミリーレストラン文化論
 夏になると高校生が図書館の自習室で勉強している。しかし、そこは通常飲食禁止である。勉強するときになにも食べられないということは実は意外にストレスなのだ。オレのように食い意地が張った人間にとっては特にそうなのである。そういうわけで食いながら勉強や仕事ができるファミレスという場所は図書館よりもかなり優れてると言えるだろう。程度な飲食は勉強や仕事の効率をかなり向上させるのである。中には飲酒しないと仕事の能率が上がらないという人もいるかも知れない。そんな人にとってもファミレスはかなり便利である。もちろん家で飲むよりもかなり贅沢にゼニのかかる行為ではあるけれども。快適な空間なのだからゼニが掛かるのは仕方がない。

 日本には昔、喫茶店という文化が存在した。家庭の応接間の貧弱さを補うように喫茶店は利用され、街のそこら中に喫茶店が存在したのである。それらの喫茶店は客を奪い合うように競争し、コーヒー一杯の値段でゆで卵やトーストのついてるモーニングサービスを実施したりして顧客をつなぎ止めた。しかし、そこを仕事場にするにはかなり無理があった。それは喫茶店の多くが零細経営であり、少しでも狭い空間に多くの客を詰め込むという必要上からテーブルは小さく、カウンターも狭かったのである。喫茶店は決してファミレスたり得なかったのだ。よほど規模が大きなモノでない限り。そして規模の大きい巨大喫茶店チェーン(いわゆるドトールやスタバのような)は、居心地の悪い椅子とテーブルを用いることで客の平均滞留時間を減らし、回転を良くするような方向を狙っていた。しかし、ファミレスは最初から広い駐車場と広い店内空間を持ち、テーブルも4人の客の料理を所狭しと並べても十分なくらいの広さがあり、シートも柔らかくて長時間座っても疲れなかった。喫茶店では不十分だった点の多くが解消されていたのである。

 最近のファミレスの中には無線LANのアクセスポイントを持ち、店内でネット取引やオンラインゲームのできるところもあるという。そうなるともはや自宅と変わらないのである。そこまで快適になったファミレスはこれからどこに向かうのだろうか。

 もちろんオレは昼食時にもファミレスを使う。同僚と一緒にファミレスに入るのだがそういうときに重視するのはやはり値段と味の微妙なバランスである。いくらおいしくてもバカ高かったら意味がないし、どんなに安くても耐えられないまずさというものもある。580円くらいでランチが食べられて、120円くらいプラスすればドリンクバーが付属するという程度が望ましい。ドケチでB級グルメのオレが昼食に毎日支出してもいい金額というのはせいぜいその程度である。多くのファミレスはその条件を満たしているし、その条件故に日々多くの客を集めているのである。混雑しているファミレスはオレにとっては何の意味もないのだが。

 値段が安く、その安さの割にはかなりおいしいのだが、なぜか全然流行っていないという矛盾する店をオレはいつも探している。極端に立地条件の悪い店、近所にライバルが多すぎるから空いてる店、理由はわからないがとにかく客の来ない店などである。そうして発見した店をオレはしっかりとチェックしておいて、仕事用に利用する。すでに顔なじみになってしまったファミレスでは、オレの姿を認めると店長が黙って店の奥の、他の客から離れた一角を用意してくれる。オレはそこでパソコンを出し、静かにカバンから書類や答案を取り出して仕事を始めるのである。こんな儲からない客のためにもしっかりとサービスしてくれるそのファミリーレストランのチェーン店の社長に会うことがあれば、きっとオレは感謝の言葉を述べるだろう。

「いつもガラガラだから仕事がしやすいんですよ!」

 追記:ちなみに私が一番良く利用するあるファミレスでは、暇そうなウェイトレスさんから「何かお飲み物をお持ちしましょうか」と声を掛けられたことがある。自分でいれるべきドリンクバーのものをわざわざテーブルに運んでもらえるというサービスをオレは断ったのだが、なんと客を大事にしてくれることだろうか。オレはそこをこれからも利用しようと誓ったのである。頼むから混まないでくれ!


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07月05日(土)
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