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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■『出口のない海』〜人間魚雷回天に寄せて
 受けた教育も違うし育った時代も環境も違うし、その上かなりの卑怯者で非国民であるオレには彼らの心情に近づくことは困難だ。ただ誰もが自分の死を決して犬死になどではなく、その死がきっと未来の日本のために役立つと信じて、自分が犠牲になることで故郷の街や村、山河が守られると信じてその命を捧げたのだとオレは思うのだ。何と崇高で、そして痛ましいことだろうか。本当なら生きのびて戦後の日本の復興のために働いて欲しかった多くの素晴らしい若者はそうして命を失い、民間人を見捨てて真っ先に逃げ出した関東軍の将校や、終戦まで軍需物資を隠匿してそれを横流しして大儲けたクソ野郎ども、部下を特攻させて自分は生き延びた上官などが戦後の日本で我が物顔にのさばっていったのだ。なんで今の世の中にはこんなに理不尽なことがあるんだろうと思うときに、その理不尽な世の中を作ったのはまさにこのクソ野郎どもなんだからと思ってしまう。

 主人公の並木少尉はかつての甲子園の優勝投手であり明治大学の野球部出身という設定になっていたが、甲子園を湧かせた投手で昭和14年の第25回大会で準決勝・決勝と連続でノーヒットノーランを達成した海草中の嶋清一投手を連想させる。嶋投手は学徒動員で出征後24歳の時にベトナム沖でアメリカの潜水艦に攻撃されてて戦死している。野球が出来るのも戦争のない平和な時代だからだ。例えばテロの止まないイラクで大規模なスポーツイベントなんかを実施したらたちまちテロの標的にされてしまう。それがあの国がまだ「交戦中」であることを意味している。

「回天」には脱出装置はない。ハッチは外側から固く閉じられる。一度入れば生還は許されない棺のようなものである。その窮屈な空間の中で、最後の瞬間に彼らはいったい何を思ったのだろうか。彼らが生還しなかった以上それを知る術はない。ただ彼らはそのような悲劇の再生産など望まなかっただろうし、自分たちが犠牲になることでよりよい未来が到来するものだと信じてその一命を捧げたのだとオレは信じたい。今この時代をよりよい社会にすることこそが、今を生きる自分たちに与えられた使命であり、そのためにこそ自分は努力をすべきなのだと感じるのだ。人生の出口を「戦場で死ぬ」という形しか選べなかったあの時代を二度と繰り返さないために我々は何を成すべきなのか。常にその答をオレは考えていたい。

関連図書(文字にカーソルを合わせると説明が出ます。)
人間魚雷回天―命の尊さを語りかける、南溟の海に散った若者たちの真実
ああ回天特攻隊―かえらざる青春の記録 (光人社NF文庫)
人間魚雷「回天」 一特攻隊員の肖像
回天菊水隊の4人―海軍中尉仁科関夫の生涯
『ああ硫黄島』『人間魚雷回天』 (戦争と平和を考えるコミックス)
わだつみのこえ消えることなく―回天特攻隊員の手記
回天特攻学徒隊員の記録―止むにやまれず破った五十年の沈黙
回天発進―わが出発は遂に訪れず
海底の沈黙―「回天」発進セシヤ
「回天」その青春群像―特攻潜航艇の男たち
海竜と回天
特攻回天戦―回天特攻隊隊長の回想
人間魚雷回天
人間魚雷・回天と若人たち (1960年)
人間魚雷「回天」―鎮魂す特攻時代


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08月20日(月)
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