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Ship Building
by コーヒー
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■一晩明けて
昨日は出張を終えて帰ろうとしてる彼を、駄々こねて引き止めて。
さらに、ひどいよ、ずっと一緒にいたいよってわんわん泣いた。
彼をいっぱい困らせた。
それなのに、彼は僕にやさしくしてくれた。
「俺、自分でもなにやってんねやろなと思ってるわぁ」
そう言いつつも、手をつないでくれた。
出張で疲れた細い身体で、自転車二人乗りもしてくれた。
彼の腰につかまると、コーヒーの部屋に彼が長く滞在していた10月の頃を思い出した。
「そんに泣かんと、笑いぃよ」
まるでラフメイカーみたいに、泣いてるコーヒーを鏡の前に立たせると
「ほら、こんな顔嫌やろ?」
鏡の中のコーヒーは、涙でぐしゃぐしゃになってとても不細工だった。
「俺がそうせぇって言うたんやから、俺には見る義務があるわな」
と、彼に言われたとおり3月からほぼ毎日掃除して、昔よりずっと片付いてるコーヒーの部屋を見てくれた。
「前よりずっと綺麗になってるよ」と褒めてくれた。
もう彼氏彼女の仲じゃなくなっちゃったのに、彼はコーヒーの部屋に泊まっていってくれた。
しかも、以前のようにお風呂で一緒にはしゃいでくれたり、一晩中コーヒーを抱っこしたり腕枕したりしてくれた。
それらはすべて酔っ払いの気まぐれだったかもしれない。
けれどそのおかげか、一晩明けてから、少し落ち着けた風味。

一晩明けてしばらく考えて。
彼の言ってることが、なんとなくだけど、わかった気がした。
彼と一緒に過ごす時間はとても楽しい、もっとずっと一緒にいたい。
でも、ふたりの未来のビジョンが、見えてこない。
このふたりでなければならない理由が、見当たらない。
そんな感じが、ほんの少し、僅かに、微かに、なんとなく、感じられた。

付き合い始めた頃、コーヒーも彼も失職状態だったけれど。
その後彼は前から就きたかった仕事にようやく就いた。
仕事を始めてまだ半年、「今はお仕事で必死」って言ってた。
今までロクに取れなかった休日が土日祝になり、友達と余裕を持って休日を過ごせるようになって、オフタイムも満喫できてる。
それまでよりもずっと充実した毎日を送っているのだろう。
付き合い始めた頃とは、もう状況が違ってる。
別に、コーヒーがいなくても、彼の毎日は回っていく。
そこに、コーヒーが、いないだけだ。
コーヒーが「必須」じゃないって、きっとそういうことなんだ。

コーヒーは、彼に依存しすぎてたんだなって、気付いた。
だから彼と少しでも一緒にすごしたい、楽しみを共有していきたいとかってところに、固執しすぎてたんだなって。
「友達に戻ろう」と言われたことで、確かにこころは寂しくなった。
思い出すと辛くて悲しくて、この数日は夜に泣いたりもした。
けれどいま、このことに気づけて、肩の荷がおりたような、とても不思議な感覚だったりする。
もう、彼女という肩書きはないけれど。
これからは気負わない自分になっていけそうな気がしてる。
身軽になって、より自然でありのままの自分になっていけるかもしれない。
もう少し頑張れば、彼のいない独りで過ごす毎日も平気になれそう。
これからも過去を思い出して寂しくなって泣くことはあると思う。
でも、前ほど後ろを振り返ったり、そこで立ち止まったり後ずさりしたりは、減っていくんじゃないかって気がしたんだ。
彼のことを忘れる必要なんてないんだ。
この涙も、きっと次へつながる。
強がりとかそんなのじゃなくて、ホントにそう思えるのが、自分でも不思議。

彼のおかげで、またひとつ勉強できた。
この二日間で、また少し成長できた気がする。
彼には感謝感謝の連続だね。
なのに、彼になんのお返しもできてない自分が恥ずかしい。
できることなら、いつかなにかのかたちで返したい。
コーヒーはもっと成長できるように、努力するよ。

もう、コーヒーは、あまり大阪に行くことはなくなっちゃうかもしれないね。
ほとんど顔を合わせる機会なんてなくなっちゃうや。
せいぜいオフ会くらいかな?
ちょっぴり寂しくなっちゃうね。
「俺は、また東京へはちょくちょく出張で来るしな」
うん。

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05月27日(土)
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