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Ship Building
by コーヒー
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■トモダチ
午後から渋谷にいると日記にあったので、しばらくたってもう一度日記を覗いてみた。
もう帰る、とあるので、急いで電話した。
コーヒーの定時まであと2時間近くあるけれど、無理を言って頼み込んで待ってもらった。
定時と同時に全力で渋谷に向かった。
ハチ公前で見たスーツ姿の彼は、なんとなく新鮮だった。
「俺はお前のことが嫌いなわけじゃない。
なんとも思っていなかったら、今日こうして話もしてないと思うから。
お前と一緒に過ごしてる時は、すごく楽しいよ。
でもそれは、友達と遊んでて楽しいってレベルと変わらないんだ。
結局、俺にとってお前は『必須』じゃないなって。
どうしてそうなってしまったのかは、俺にもわからなくて。
いままで俺もなんとかしようと頑張ってた、それがこのところの倦怠期だったんだと思う。
単純に、俺の気持ちの問題。
お前にはすごく酷いこと言ってて申し訳ないなと思う」
ああ、悲しいな。
どれほどコーヒーが彼を大事に想っていても、彼には届かないんだ。
コーヒーは、彼のお友達でしかなくて。
彼の大切な人ではなくて。
彼と結婚もできないし、彼の子供のお母さんにもなれないんだなって。
「お前とは、一生通して付き合える大事な友達でいられたらなって思う。
これってすごい難しいことだよ。
友達は、恋人よりも疎遠になりやすいからな。
いまはまだ日が浅いから、そう考えるのは難しいだろうけどな」
お友達。
なんて難しい響きなんだろう。
彼に新しい彼女ができちゃったら、きっともう逢ってくれることもないんだね。
「彼女ができるまでは、今までのようにお前にいろいろサービスするよ。
申し訳ないからな」
お情けで付き合ってもらっちゃってるみたいで、悲しいなあ。
「まだ諦めたらあかんよ。
ひょっとすると、またもう一度俺の彼女として付き合えるかもしれない。
俺の友達も10年以上付き合ってるヤツがいるけど、そいつらも離れてた時期はあったらしいからな。
この先、そういうチャンスもあるかもしれない。
でも、他のチャンスも見逃さないように」
恋愛は、せーのでどっちもが同時に好きになることなんてほとんどないと思う。
先に火がついたのは彼。
先に消えてしまったのも彼。
コーヒーの胸にだけ、燻り続けてる。
悲しい。
彼の大事なひとになれないのが、ただひたすら悲しい。
05月26日(金)
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