ID:27426
雲間の朝日に想うこと
by 小坊主
[165357hit]
■記憶は捨てる物だったでしょうか
自身に刻み付けた筈の、
記憶は。
徐々に消去され、
或いは封印され、
色褪せて行くけれど。
形として、
既に出力された記録は。
大抵は、
色褪せる事無く生き続ける。
其れ故に。
色褪せる筈は無い、
記録を残して。
忘れがちな想いを、
丁寧に、
なぞり続けるのかも知れないけれど。
逆に其れは。
忘却と言う機能を奪い盗る、
危険な薬剤なのだろうか。
映像が詰まった磁気の帯を、
整理する為に。
中身を映し、
確認して居ただけなのに。
其の記録は、
封印した筈の記憶を簡単に呼び出して。
其の強化迄、
丁寧に施して行った。
愛を語らう為の部屋。
バスローブに包まる二人。
背後に流れる午後の地方番組。
デジカメの小窓に、
不可抗力で映されて終った、
旦那の姿。
半べそで謝り続ける、
貴女の姿。
飽く事無く、
唇を重ね逢わせる二人。
電源の切り忘れに気付き、
焦る貴女。
録画した画を観ようと、
面白がる俺。
此の画を俺に贈る為、
貴女が封筒へ必死に振り注いだ、
貴女の香水の匂い迄。
既に跡形も無く揮発して、
消えた筈の香迄。
鮮明に紡ぎ出されて蘇る。
早く、
捨てれば良いのに。
----------
References
Mar.14 2002, 「挑んでも良いですか」
10月19日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る