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雲間の朝日に想うこと
by 小坊主
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■一度きりの言葉じゃいけませんか
其の時の想いを、
口にしたいと。
其の時の雰囲気を、
大切にしたいと。
そう願う故に。
一度放たれた言葉は、
其の場を切り取り形作られた言葉は、
其の瞬時にしか有効に作用しない言葉であり、
勝負は一度きり。
例え其の言葉に、
どれだけの想いを込めようとも。
「聞こえない♪」
「もう一回言って♪」
「駄目。」
「もうおしまい。」
無条件で甘える貴女に、
同じ言葉を同じ量だけ同じ想いで贈る事は、
決して在り得ないのだ。
貴女が地に降りた頃を見計らって、
携帯を握った。
「只今電話に出る事が出来ません。」
例え貴女の声で応答するとは言え、
無情にも貴女の携帯は、
伝言を残せと応えるのみ。
已む無く、
俺の言葉を貴女の携帯に託し、
通話を閉じた。
電話を切った直後に、
貴女から折り返しの電話。
「もしもし?」
「はいはい?」
「電話くれたよね?」
「うん、伝言残したよ。」
「え?入ってない!」
「入れたよ!」
俺が通話を閉じる寸前に、
貴女が電話に出た事で。
折角残した筈の伝言は、
何処かに消え失せてしまった。
次々と携帯に入る、
催促の文。
「小坊主さま♪」
「メッセージが入ってないよぉ!」
「オ・ネ・ガ・イ♪」
俺の伝言を携帯に残せ残せと、
執拗に届く催促。
言葉は生き物であって、
其の時を逃がしたら、
時と共に変化してしまうんだ。
勝負は一度きり。
其れが伝言であっても。
07月01日(火)
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