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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■信じることについて追加(長いよ)
前回「信じる」ということについて雑記を書きました。そうしたら、結構反響が大きく、質問や相談を投げかけられました。それらにひとつひとつ答えるのではなく、まとめて雑記に書くことで答えたいと思います。
「信じる」ということは、12のステップではステップ2にあたります。ステップ2の話をする前に,簡単にステップ1の話を済ませておきましょう。
ステップ1は「無力を認める」ステップです。具体的には、私たちにはアルコホリズムという問題があり、その問題を「自分では解決できない」と認めることです。
例えば、あなたが自動車を所有していたとします。ある日、あなたが車に乗ろうと乗り込んでイグニッションキーを回しても、エンジンがかかりません。車が故障しているのです。それがガス欠とかバッテリー切れのような単純な問題ならいいのですが、最近の自動車は高度なエレクトロニクスが使われていて、そのあたりが壊れると素人ではどうしようもありません。
あなたは自動車の修理を「諦め」ます。つまり自分の力では解決できないと認めるステップ1です。
同じことはパソコンにも言えます。パソコンを使おうと電源スイッチを入れたのに画面が真っ暗で起動してくれない。そうなったら修理に出すしかないではありませんか。スマートホンでも同じです。自分の力で解決できなければ、車ならディーラーへ、パソコンやスマートホンならショップに修理を依頼するでしょう。
同じことはアルコホリズムにも言えます。この場合の問題は「自分の力では酒をやめられない」ということです。自分では問題を解決できない=自分の力では再飲酒を防げない、ということを認めることです。自動車やパソコンが壊れた時みたいに簡単に認めることができればいいのですが、アルコールのこととなると簡単ではありません。なぜなら人間にはコントロール欲求があり、自分の力で何とかしたいと思うからです。
僕は技術者なので、自動車やパソコンが故障しても、まず自分の力で解決したいと考えます。ボンネットを開けたり、パソコンの裏蓋を開けて、ごそごそやります。時にはうまく直るときもあります。「どうだい、見てくれ、俺ってすごいだろう!」
ところが、一見直ったように見えても、また同じところが具合悪くなったり、たまたま動いただけだったりします。するとまた故障がぶり返します。その度に僕は時間を使って修理し、何度も繰り返した挙げ句に、うんざりして妻にこう言います。
「諦めたよ。やっぱり修理に出そうと思うんだ。しばらく自動車(あるいはパソコン)なしの不便をかけるけれど我慢して欲しい」
そうすると妻はこう返事をするでしょう。
「最初からそうして下されば良かったのに。そうしていれば、もう今頃修理から上がってきたはずじゃない」
いやいや面目ない。最初から意地を張らなければ良かったのですが。
アルコールでも同じことが言えます。自分の力で断酒をしようとします。時にはそれが何ヶ月、何年と続くこともあります。もしその人が自力断酒で一生を飲まずに過ごせるなら、こんなに素晴らしいことはありません。だが大半の人が再飲酒をします。何年か断酒した後に再飲酒する人も少なくありません。
その人は飲んでしまった原因を自分なりに探して、その対処をし、また自力で酒をやめていこうとします。そしてまた飲む。そんなことを繰り返していきます。それを何日、何週間と短く繰り返す人もいれば、何年、十何年という長い周期で繰り返す人もいます。何が問題なのか?
そもそも「自分の力で問題を解決できる」と考えたのが間違いであり、それが再飲酒の原因なのですが、人はなかなかそれに気がつきません。でも、最後の最後にはそれに気がついて、奥さんにこう言うでしょう。
「諦めたよ。自分の力では無理だ。やっぱりAAとかハイヤーパワーに自分をまともにしてもらおうと思う」
おそらく奥さんは、こう返事をするでしょうね。
「最初からそうして下されば良かったのに」
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09月02日(月)
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