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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■自分一人で12ステップができるか?
12ステップについていろんな質問を受けます。よくあるのが「自分一人で12ステップができるか?」というものです。
AAの12ステップをやるには、まずAAミーティングに通ってAAメンバーになり、そこでスポンサーを見つけてその人から12ステップを手渡してもらう、というのがもっとも一般的なやり方になります。AA以外の、○Aとか○○ノンというグループでもおそらく同様でしょう。
アメリカでは依存症の回復施設のプログラムとして12ステップが使われていることが多く、そこで施設のスタッフから12ステップを伝えられた、という人も少なくないそうです。日本にも(数は少ないけれど)そういう人もいます。
グループに加わるにせよ、施設の世話になるにせよ、人の集まりに加わることが求められます。また、12ステップは人から人へ直接渡されることが前提になっています。それは12ステップが、直接人から人へ手渡されることで始まったからです。
であるのに「自分一人で12ステップをやれないものだろうか」という考えが生まれてくるのには、いくつかの理由があるようです。
まず一つは、現在の日本のAAグループで12ステップに取り組む人が少なくなってしまったために、AAに加わってたとしてもスポンサーが見つからない(あるいはスポンサーがステップをやってない)という困った状況が生まれていることです。これはAA以外のグループについても言えることかもしれません。
また、何らかの事情で人の集まりに加われない、という場合もあるようです。直近のミーティング会場まで何時間もかかるとか、対人関係が苦手なのでグループに加わりたくないとか、あるいは仕事や家庭の事情でグループ参加に時間を割けないとか・・・。
まあその他にもいろいろで、中には人に頭を下げたくないのでスポンサーが頼めないという、首をかしげたくなる理由もあったりします。
話を戻します。
ビッグブックは12ステップを伝えるために書かれたテキストです。読んでみれば分かりますが、読者として身近にAAグループがない人を想定しています。この本が書かれた1930年代後半、AAメンバーはまだ数十人しかいませんでした。12ステップを全米に、いや全世界に伝えていくのに「直接人から人へ手渡す」というやり方に固執していたのでは、その目的は達成できません。
そこで彼らは一冊のテキスト(教科書)を書き、読者がその内容に従って回復し、それぞれの地方での最初のAAメンバーとなることを期待しました。この作戦が当たって、AAはここまで大きく成長できたと言えます(日本のAAがイマイチなのはビッグブックを軽視しているからでしょう)。
だから、一人で12ステップを出来るかと言えば、その答えはイエスということになります。
この答えに安心する人もいることでしょうが、実はそれは簡単ではありません。本を一冊読んで、その通りに実行することがいかに難しいか。ビッグブックは薄い版でも二百数十ページあります。12ステップに限らず、どんな分野であれ200ページ以上ある本を読んで、その中身を十分実践できた経験のある人がどれだけいるでしょう。途中で挫折した経験のほうがずっと多いのではないでしょうか。
本を読んで一人でステップに取り組める人というのは、「酒で死んでたまるか」(肉体的に死なないまでも社会的に死んでたまるか)という回復への意欲の強い人たちに限られるのではないでしょうか。今の日本でそこまでガッツのある人ならば、直近のミーティングまでどれだけ遠かろうと通うでしょうし、スポンサー候補がどんなに気に入らない奴でも頭をさげてスポンサーを頼めるできるでしょう。だから、一人でやる羽目にはなりません。
これが今の日本で一人でステップに取り組む人が滅多に出てこない理由だと思います。
12ステップの成立に大きな影響を及ぼしたカール・ユングは
「人はふつう、ほかの人と共に活動することで、決定的でスピリチュアルな経験をする」
と語ったそうです。12ステップの成果を出すには、人の集まりに加わって協力して活動することが最もたやすい道なのです。
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05月17日(金)
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