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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■自分が助かりたければ・・・
ステップの話ばかりではなく、共同体の力についてのことも書いた方が良いでしょうね。

先日東京某所のAAミーティングに参加したところ、ソブラエティ二十数年というあるAAメンバーの姿をお見かけし、こちらから挨拶したところ「よう、ステップの専門家!」とからかわれてしまいました。

「専門家になったつもりはないんですが、まあでも、これは誰かがやらなくちゃならないことでしょうね」と答えたところ、「何でも最初にやる人間は大変だよ」と言われました。僕が最初というわけでもないのですが、なんとなく目立ってしまっているのかも知れません。

人間には未知のものに対する恐れがあります。だから人は、すでに知っていること、経験したことの範囲で考え行動しようとします。成果が出ているうちはそれでもかまわないのですが、悪い結果が出るようになっても、考えや行動を変えることはなかなかできないものです。それは、今までと違った考え、違った行動を取ることへの恐れがあるからです。ことわざに「知らぬ仏より馴染みの鬼」とあるとおりです。

恐れの反対は勇気です。新しいことに取り組むには勇気が必要です。だからこそ「変えていく勇気」を与えて下さいと神に祈るのではないでしょうか。

アルコールや薬物には私たちの不安を一時的に和らげる効果があります。だからアルコールや薬物に頼って生きてきた人間は、未知への不安が一層強く、考えや行動を変えづらくなっているのかもしれません。けれど、回復や成長を望むのなら、新しいことに取り組む勇気が私たちに必要だということになります。

さて話は変わって、昨年9月には北海道に行かせてもらい、せっかくの機会だからと札幌市内のAAミーティングに出させて頂きました。また先月は沖縄へ行き、やはり那覇市内のAAミーティングに行きました。(12ステップは僕をいろんなところへ連れて行ってくれます)。

僕は、日本に約900カ所あるというAA会場の全部に出たわけではありません。ごく一部だけです。その経験の範囲内で言えば、日本の北でも南でもAAにはある共通した傾向が見られます。

どこでもAAを維持している人たちがいます。彼らはAAグループを運営するために、ミーティング会場を開き、本やコーヒーを用意し、新しい人たちを迎え入れています。必要があればAAの広報活動もするし、病院に出向いて患者さん相手に話をしたりする。委員会などのAAを存続させていく活動にも時間を割いています。それだけでなく、新しくやってきた人たちのスポンサーを務めて12ステップを伝えることもしています。

なぜそんなことをするのか。それは、AAの回復のメッセージを伝えることで、新しい人たちがこの病気から回復するからです。

この人たちを「人を助ける側」と呼びましょう。助ける側の人たちは少数派です。その人たちがグループの1割なのか、3割なのか、それともたった一人なのか、割合はいろいろでも、グループの中ではたいてい少数派です。

ではその他の多数派はどんな人たちなのか。それは「自分が助かりたい」と思って来ている人たちです。この人たちの関心は、自分の苦しみや悩みに(あるいは楽しみに)向けられているようです。だから、グループの役割などもあまり引き受けたがりません。他の人が維持しているAAに「お客さん」として通うタイプです。

数ヶ月か数年、時間をおいて同じ会場に行ってみると、「助ける側」の人たちの顔ぶれはあまり変わっておらず、相変わらずAAを維持する負担を背負っています。一方、「自分が助かりたい人たち」は、顔ぶれががらりと変わっていることが多いのです。少し残っている人たちもおり、その中には「助ける側」に立場を変えた人もいますが、残りの大部分はすでにAAを去り、空いた場所を新しい人たちが埋めています。

AAを去って行った人たちはどうなるのか。AAを離れたからと行って、皆がすぐに再飲酒するわけではありません。ずっと酒をやめ続ける人たちもいます。しかし、5年、10年と経るうちに、飲まないでいられる人は少なくなっていきます。グラフにすればきれいな懸垂曲線を描くでしょう。飲んでしまった人たちは、またAAに戻ってくるか、他で世話になっているか、飲み続けているかなのでしょう。


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03月14日(木)
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