ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■回復施設について
日本にはアディクションの回復施設が結構たくさんあります。僕もそのすべてを知っているわけではありませんが、数え上げれば100ちかく・・いや100ヶ所以上存在しているかもしれません。

日本の回復施設の起源は、日本でAAを始めた二人の神父が設立した「マック」という施設でしょう。大宮で始まったマックは、後に全国に広がります。アルコールの問題を扱っていたマックに対し、薬物の問題を扱うために作られたのが「ダルク」です。現在では、マックに薬物の人もいるし、ダルクにアルコールの人もいるので、両者の違いは明確ではなくなっています。この他にもたくさんの施設がありますが、その多くは源流をたどれば直接・間接にマック・ダルクの系譜につながります。

アルコールの問題に限れば、クリニックに通院することも、精神病院に入院することも可能です。また、AAや断酒会のようなグループも存在しています。なのになぜ、病院に入院するのではなく施設に入所する必要があるのか。またグループに通うのではなく、施設に通所する必要があるのか。

それを説明する前に、なぜ現在の日本のAAで施設の話題が嫌われているのかを説明する必要があるでしょう。

前述のように、日本でAAを始めた二人は、マックという施設も始めました。おかげで、始まりのころ日本のAAとマックは一体となっており、二つの名をつなげて「マックAA」あるいは「AAマック」という呼び名すら通用していたそうです。これが初期のAAの発展に大きく寄与したのは疑いありません。マックが全国に広がるとともに、AAも広がっていきました。各地でマックはAAの中心的存在として機能したはずです。

しかしながら、AAには「12の伝統」があり、その6番目でAAが治療施設を運営するのは良くないとされています。それはなぜか。12の伝統はすべて実際の経験に基づいて作たわけですが、アメリカのAAでは幾度かアルコールの専門病院を作ってみたそうですが、どれもうまくいきませんでした。施設を運営するには多額の資金が必要になりますが、そうした多額のお金はたいていAAグループをおかしな方向へ導いてしまうからです。

「AAは施設を運営しないほうが良い」ということになりました。しかし、あの有名なヘイゼルデンもAAメンバーが作った施設であることからもわかるように、施設はAAメンバーの必要に応じてできたものです。AAメンバーが施設の運営に関わらざるをえません。

そこで、AAメンバーが施設スタッフをやっていることが例えバレバレだったとしても、施設はあくまでAAとは別の団体としてAAの名を使わず、AAメンバーが施設スタッフとして活動しているときはAAメンバーの立場を使わず、逆も同じとする(「二つの帽子をかぶり分ける」)ことを要求しました。

(AAメンバーとして活動するときは施設スタッフではなく、施設スタッフとして活動するときにはAAメンバーではない)。

また伝統の3番は、AAグループがAA以外のものに従属することを戒めています。このようなことから、日本のAAがマックと一体となっていたことも問題視されました。

そこで、AAとマックを分離する運動が行われました。これはAAの側からすれば「マック排除運動」という様相でした。私たちは酒をほどほどに飲むことができず、とことん飲んでしまった人間です。アルコホーリクは白黒思考であり、行動も極端から極端に走ることが多いものです。このときも同様で、AAはそれまで一体だったマックを徹底的に排除することになりました。

結果として、AAの中でマックの「マ」の字も言いづらい状況になり、「ある施設」などとあいまいにぼやかした言い方がされたりしました。施設内のことをミーティングで話すと咎められ、施設スタッフだという理由だけでミーティングで話をさせてもらえず、AAの役割からも外されるということが起きていました。

今では排除運動も過去のものとなり、そうした行き過ぎは是正されつつあるものの、今でも施設の話題はAA内部では嫌われる傾向は残っています。


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03月05日(火)
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