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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■ステップQ&A:ステップ1
12ステップは「勉強する」ものではない、と言う人もいます。ましてや「教える」なんてとんでもない、とも言われたりします。

教えてもらうことも、学ぶこともなしに、どうやって12ステップを身につけることができるのか?

モーツァルトは4才の時に、誰も教えていないのにヴァイオリンが弾けるようになったそうです。周囲の大人たちがヴァイオリンを演奏しているのを、見よう見まねで憶えたのだとか。だがそれは、モーツァルトが天才だったからこそ可能になったことで、普通の子供はヴァイオリン教室に通いながら、教えてもらうことで弾けるようになっていきます。

AAが12ステップを教えることも学ぶこともない場所だとするなら、天才しか回復できない場になってしまいます。僕はそんなAAは嫌だ。誰でも回復できる場所であって欲しい。その為には、AAに12ステップを教えたり、学んだりする仕組みが必要です。それがスポンサーシップだったり、集団でステップを学ぶ仕組みだったりします。

12ステップというのは「生き方」です。ところが生き方というのは、教えるのも身につけるのも、時間と手間がかかります。だから、人はその手間を嫌って、もっと楽なやり方ですまそうとします。その人は、もっと良い人生を送る能力があるのに、その能力を活かす方法を教えてもらおうとはしません。ステップは教えてもらうものではないと言いながら、古い考えにしがみつく方を選び続けるのです。

さて、「ステップ1ではアルコールに対する無力を認めれば良いのか?」という質問をもらいました。

ステップ1は、「私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた」という文章になっています。

ステップ1が要求していることは、アルコールに対する無力を認めることです。他のものに対する無力を認めろとは言っていません。

私たちは、アディクションの対象(酒・薬・ギャンブルなど)に対して無力であるばかりでなく、他の様々なことに対しても無力です。しかし、ステップ1の段階では、他の色々なことに対して無力を認めろとは言っていません。アルコールだけです。それはなぜか。

第二章の先頭には、私たちAAメンバーが「出身地も、職業もさまざまなら、政治的、経済的、社会的、宗教的背景もいろいろで、ふつうなら出会うことさえもなかった者同士だ」とあります。あるAAミーティング会場に集まった人が、たまたま中年の日本人男性ばかり、ってこともあるかもしれません。でも、他の会場に行けば、若い人も年寄りもいるし、女性もいます。外国の人もいるし、宗教や職業もバラバラです。

すべてのAAメンバーに共通することは、アルコールの問題だけです。他には共通点がないと言ってもかまいません。AAは共通する問題を抱えた人たちの集まりです。(もっと言えば、AAは共通の問題ばかりでなく、共通の解決(12ステップ)を持つ人の集まりでもありますが、それはここでは脇に置いておきます)。

AAメンバーはアルコール以外のことに対しても無力かもしれません。しかし、人によってその中身は違います。例えば僕は車のエンジンが壊れたら自分で修理できません。つまり車の故障に対して無力です。だから、自分で解決したくても、どうにもなりません。「自分を越えた大きな力」であるところの自動車修理工場に頼んで、修理してもらうのが正しい選択です。

けれども、もしあなたの職業が自動車修理工なら、僕とは違ってエンジンを自分で修理できるでしょう。ならば、あなたは車の故障に対して無力ではありません。僕とあなたは共通ではない、ということになります。

12ステップはすべてのAAメンバーに共通する問題を扱っています。ステップ1だけでなく、12ステップ全体を通してそうなっています。もっと先のステップに進めば、アルコール以外にも私たち全員に共通する問題があることが見えてきますが、ステップ1の段階でそれを気にする必要はありません。

皆に共通する問題。アルコールに対して無力を認めれば十分です。


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07月27日(金)
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