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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■ステップ4・5偏重主義
最近はゆっくりテレビを見ることが少なくなりました。(録画してもどうせ見ないし)。
以前たまに見ていた番組の一つが『プロフェッショナル 仕事の流儀』です。各分野のプロ中のプロの仕事のやり方、信念などをドキュメンタリー形式で紹介する番組です。
何年か前、その番組にある外科医が出演していました(名前は忘れました)。外科医という職業は手術の巧さを追求するもののようです。彼は若い頃、手術の巧さとは手術の手早さである、と信じていたそうです。アメリカでの修業時代、彼は同僚のアメリカ人医師より短時間で手術を終えることを内心誇りにしていました。しかし、赴任して時間が経つと、彼はあることに気がつきます。
同僚の手術した患者のほうが、彼の患者よりその後の入院期間が短く、早く退院していきます。しかも、術後のトラブルも少ない。彼は自分の誤りに気がつき、以後、手術の巧さとは早さではなく、その後の回復のスピード、順調さであると信念を変えることとなりました。
ぼんやりその番組を眺めながら、僕は「彼の教訓から自分が学べるものは何だろうか」と考えていました。
12ステップについて言えば、ステップ4から9は自分の中の「良くないもの」を取り除く作業ですから、「手術」に例えることもできるでしょう。取り除くのはステップ5では「自分の過ち」、ステップ6では「性格上の欠点」、ステップ7では「短所」と表現されていますが、これらはすべて同じことを示しています。(ビッグブックが書かれた当時は、そのような修辞法が流行っていたのだそうです)。
ステップ4と5の棚卸しは、メスで体を切り開いていくように、自分の内面の問題を探り当てていきます。おそらくここを丁寧に丹念に行うことが必要なのでしょう。
「私たちはおごりを捨て、どのような性格のゆがみにも、過ぎ去った過去の暗い裂け目にもくまなく光を当てていく」(p.108)
ビッグブックのやり方の棚卸しでは表を作ることになっています。僕は「恨みの表」「恐れの表」「性のふるまいの表」の三つを使います(さらに四つ目の表を使っている人たちもいます)。僕はスポンシーにまず「恨みの表」を書いてきてもらい、そのステップ5を聞きます。一回のセッションは数時間なので、恨みの表が一回では終わらず、何回かに分けることになるのが普通です。これが終わると、次に「恐れの表」を書いてきてもらいます。恨みの表と内容がかぶっているので、わりと早く終わります。性の表は人によって長かったり短かったりいろいろです。
こうやって丁寧にやると、問題点が明確に分かって良いのですが、難点もあります。棚卸しに日数が必要になりますが、連続何日も時間を割くことはお互いできませんから、どうしても日付が飛び飛びになります。スポンサー、スポンシーどちらかが忙しければ間隔が開いて、全体が何ヶ月にも渡ってしまうこともあります。間延びしてしまうわけです。
その間も、表で明らかになった問題点を意識の片隅に置いておければ良いのですが、日常の忙しさに紛れて失念してしまい、次に再開したときに「えーと、なんだっけ?」ということになりかねません。下手をすると、棚卸しの目的が「表を完成させること」になってしまいます。(棚卸しの目的は表の完成ではなく、自分の性格的欠点や傷つけた相手を把握すること。表は手段に過ぎない)。
最近自分が忙しくなってきて、この間延びの悪影響が目立ってきました。すこし考え直さないといけないと思っていたところです。
ジョー・マキューは12ステップを短期間で行うことを主張していました。例えば1ヶ月、あるいはもっと短い日数で12ステップ全体をこなします。そうなると、棚卸しにもそんなに時間はかけられないでしょう。
ラリーさんはジョー・マキューの弟子にして後継者ですが、数ヶ月前に来日した彼のスピーチを聴く機会に恵まれました。彼は一晩で3つの表を書き上げ、翌日の午後にジョーにステップ5を聞いてもらったそうです。詳しく確かめたわけではありませんが、おそらく表を書くこと・聞ことを合わせて「丸一日」ぐらいでしょう。僕の今までの考え方からすれば、ずいぶん短く感じます。
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07月13日(金)
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