ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■薬物療法への偏りの原因
掲示板に「日本の精神医療が薬物療法に偏っているのは、薬物療法が安価だから」と書いたところ、精神科医の方からメールをいただきました。以下その内容をご紹介します(許可をいただいています)。

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薬物療法に偏るのは、二つの原因があり、一つは「診療報酬上の問題」、もう一つ「薬物療法に偏った精神科医の教育の問題」です。このうち前者の影響が最も大きい。

保険証を持って医療機関を受診すれば、本人の窓口での負担が(たいてい)3割。残りの7割は保険者に請求され、審査の上で翌月か翌々月に支払われます。医療機関は収入のほぼすべてをこの診療報酬によっています。ただし、保険診療である限り、診療報酬は細目ごとにすべて価格が決まっており、日本全国どこでも同じになります。この診療報酬が、医療費削減の名のもとにどんどん削られ、かつてない低額になっています。

再来の場合、再診料が70点。通院精神療法が330点。処方料(処方をしたことに対する診療報酬)が42点。保険点数1点が10円で、合計4,420円。

院内処方の場合、これに薬価が入り、その額は人によって違います。
現在、薬代は仕入れ値と売値(請求額)が、ほぼ同額になっており、薬を出しても医療機関の利益にはつながりません。昔は仕入れ値が売値の6割だか7割だったことがあり、薬を出せば出しただけ、医療機関が儲かった時代がありました。薬漬けとか言われていたころです。(しかし、この方が医師になられた頃には、すでにそうした時代は過ぎ去っていたそうです)。

そういう訳で、薬は儲けにならず、患者さんひとりの外来での再診で、再診料+通院精神療法+処方料のざっくり4,400円の収入が医療機関に入ります。(検査などはまた別。また、初診の場合はもっと診療報酬単価は高い)。

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ここまでがメール前半の要約です。
調べてみると、現在の薬の納入価格(医療機関にとっての仕入れ値)は、新薬で薬価基準の88%〜90%、ジェネリックで80%〜85%とあります(ソースはWikipedia)。これに消費税5%が上乗せされ(診療報酬側には消費税総額はなし)、在庫管理の費用が加われば、「薬価差益」で儲けるどころか、薬を出せば出すほど赤字になりかねません。

メールの後半では、よく言われる「3分診療」ではなく、一人30分を費やすクリニックを想定して、どんな収支になるか見積もっています。

これはクリニックを寿司屋に例え、客の好みも聞かずに大量の寿司を並べて押しつけるのではなく、「おれは客とじっくり対話して、本当に美味しいものを出す。客と寿司屋のコミュニケーションに最大限の時間を割く。精神分析療法と動機付け面接法と認知行動療法を取り入れた寿司屋にする」という情熱に燃えた若き寿司職人(医師)の行く末を書いた力作なのですが、申し訳ないけれどざっくり省略させて頂きます。

一人30分を費やすと、平日9時〜5時土曜は半ドンで営業したとしても、一月の診療報酬がざっと140万円にしかなりません。これで医師・看護師・医療事務・心理療法士の給料を払い、家賃や光熱費その他の経費が払える・・・わけがありません。

僕はIT技術者として働いていますが、自分の給料の3倍の粗利を上げてくれと言われています。自分の給料の他に、家賃や光熱費、営業費用、会社の借金の金利、非生産部門や管理部門の給与などなどをまかなうにはそれぐらい必要です。スタッフ4人のクリニックの収入が月140万円でやっていけるわけがありません。

では、カウンセリングの費用はどうなっているのか?
これはメールをそのまま引かせてもらいます。

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このように診療報酬が激安なため、医療機関は利幅が非常に薄いです。
臨床心理士のカウンセリングは、診療報酬が算定できません。「ただ」です。
心理検査には診療報酬が制定されているので、カウンセリングと同時に心理検査をちょこっとやって、何とか検査代だけは収入を得る、なんてことをやっている施設もあります。
また、家族面談、電話相談なども、もちろん診療報酬を請求できません。
ただです。
「本人とは別に会社の上司や家族がばらばらに来て、それぞれに病状説明」なんてのも、一円も収入になりません。


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02月23日(水)
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