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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■ふたたび心の理論
発達障害の話。
「注意欠陥・多動性障害」とうのはその頭文字の「ADHD」という略語が使われる場合がほとんどです。ただ、「えーでぃーえっちでぃー」というのは略語として音節があまり減っていませんね(TNP27と同じ)。
発達障害の話題を取り扱ったブログなどを読むと、アスペルガーに「AS」という略語をあてている場合があります。これは Asperger の先頭二文字だとずっと信じていたのですが、実は「自閉症スペクトラム(autism spectrum)」の頭文字のようです。
ASについて気がついたことがあります。
これは本に書いてあったとか、だれぞ先生の講演で聞いた話と違って、僕が観察と帰納的推理によって導き出したものなので、ほとんど自分用メモのレベルです。
ASの人は
・人の気持ちが分からない
・空気が読めない
・話の流れが分からない
という特徴があります。これはAS関係の本を読めば書いてあることです。
けれど、ご当人は、自分にそんな特徴があるとはまったく思っていないものです。つまり、ご当人は「自分は人の気持ちが分かる」「空気も読める」「話の流れも分かる」と思っているということです。できないことの自覚がありません。
「心の理論」については以前書きました。
(参考リンク:http://www005.upp.so-net.ne.jp/ma2ma3/kokoro.html)
前回の雑記で、最も基礎的な Perspective Taking の能力を身につけるのは3〜6才となっていました。
Perspective Taking というのは「他の人が何を考え、感じているかを想像する能力」です。
心の理論の課題を再掲します。
子供(A君)にチョコレートの箱を見せます。「何が入っていると思う?」と質問すると、答えは当然チョコレートです。箱を開けて見せ、中身が実は鉛筆であることを示します。箱を閉じたところへ、B君が部屋に入ってきます。そこでA君に再度尋ねます。「B君にこの箱を見せて、中に何が入っているか聞いたら、なんて答えると思う?」
正解はチョコレートです。B君は中身が鉛筆であることを知りません。箱だけ見て「チョコレート」と答えるでしょう。
3才の子供にこれを試すと、ほとんどが「鉛筆」と答えます。Perspective Taking の能力がまだ発達していないので、B君の気持ちが想像できないのです。4才、5才になるとほとんどが正解します。ダウン症の知的に遅れのある子供でも、この課題の通過はあまり遅れません。しかし自閉症児の場合には10才ほどにならないと、この課題が通過できません。
アスペルガー症候群の場合には、心の理論の課題通過はこれほどの遅れがないようですが、質的な違いが指摘されています。それはつまり、心の理論の課題通過は、心の理論の獲得を意味しないということです。以前掲示板でブログを紹介した狸穴猫さんは、彼女が定型発達者とのコミュニケーション手法を、外国語講座のシチュエーション場面を丸暗記するように憶えていったのだそうです。
ASの人はパターン学習のような丸暗記が得意だということを踏まえると、「答えはチョコレート」と記憶することで先ほどの課題を通過できます。
つまり自閉症に限らず(アスペルガー、PDDNOSの別を問わず)AS全般に「人の気持ちが分かる」能力がそれほど発達することはなく、その代わりにパターン学習・観察・記憶しているパターンへ当てはめという戦略によって「人の気持ちを推理している」のではないと思うのです。
アスペルガーの人が心の理論の課題に取り組むとき、定型発達者とは脳の別の部位が活発になっていることが確かめられています。
だとするならば、ASの人の「人の気持ちを分かろうとする」努力は、知的作業である(のかもしれません)。
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01月25日(火)
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