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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■働くということ
廣中直行著『やめたくてもやめられない脳』を再読しています。

なんのために読んでいるかというと、アルコールや薬物という「物質依存」と、ギャンブルや買い物のような「プロセス依存」について、脳の中で起きていることの違いを知りたいと思ったからです。

それについては、いつか書くとして、この本の中にこんな文章がありました。

<精神医学の考え方が変わってくるのと並行して精神的な成熟に対する社会の考えも変わった。私が学生生活を送っていた一九七〇年代後半まではまだ古い考えが残っていて、精神的な成熟とは、基本的には動物学的な概念だった。つまり成熟した人には食糧を手に入れる能力と繁殖能力がなければならなかった。食糧を手に入れる能力とはすなわち「世の中に出て」働く能力であり、もっと言えば官庁なり会社なりといった組織に属することのできる能力であった。繁殖能力とは「まっとうな」結婚をし、その生活を維持する能力だった>

その後、時代は変わり、人の価値観は多様化しました。成熟した人(=精神的に健全な人)であるために、組織に属して働いたり、家族を持つことが必ずしも求められなくなりました。人それぞれであっていいというわけです。

しかし、稼得能力+家族という価値観が圧倒的だっただけに、それにかわる強烈な価値観を一人ひとりが持つことは意外と難しいことです。

発達障害に関する文章を読むと、(特定子会社であれなんであれ)働けるようになったことが本人の自己評価に大きく寄与している様子をうかがうことができます。

断酒会の新年会に行った話はヨソで書きました。いろんな人といろんな話をしたのですが、気がついたことがありました。県内の断酒会は高齢の人が多いのです。AAが30〜50代が主力に対して、断酒会は60〜70代の人が多いのです。(都市部に行けば若い断酒会員も珍しくないのだそうですけど)。

この断酒会の人たちはすでに勤め人はリタイアして、仕事は田んぼだけという人も多いのですが、とまれ酒を飲みながらでも働き、やめた後はもちろん働いてきた人たちです。長く断酒会をやっている人たちも多いのですが、その人たちが会に来た頃は、酒さえやめれば、仕事も家族も失わず、失っても再獲得できる人が多かったのだと思います。つまり、それだけの能力を備えた人が多かったわけです。

だからこそ、仕事や家族を急いで求めずに、まず半年、1年、2年と断酒に専念しろというアドバイスが有効だったのでしょう。イネイブリングを止め、底つきを待つという戦略も有効だったのでしょう。

これからもそうした戦略が有効な層は存在し続けるでしょうが、違うニーズを持った人たちも増えている・・。

新年会でそんな話をしていました。

01月14日(金)
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