ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■患者調査データ発表される
厚生労働省の平成20年患者調査の結果が一部発表されています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/index.html
患者調査というのは、全国の医療機関を抽出して、どの病気の人がどれぐらい入院・通院しているか調べた統計で3年おきに調査が行われています。(この後で使う用語の解説も上記のサイトにあります)。
アルコール依存症の総患者数は4.4万人。過去5回とも4万人台で推移しています。アルコール依存症の診断基準(IDC-10)を満たす人は約81万人と推定されますから、依存症の治療を受けている人は19人に1人しかいないわけです。ということは19人中18人は未治療のまま。
依存症についての集計はこれだけしか載っていないので、他の精神病を見てみましょう。
気分障害全体(うつ病、躁うつ病、気分変調症など)の総患者数は104万人。これは平成8年の43万人から2倍半になっています。このうち7割弱がうつ病(F32-33)です。
統合失調症は総患者数が平成8年に57万人、それ以降なぜか総患者数の発表がありません。入院が減って通院が増えていますが、総数に大きな変化はなさそうです。
神経症(F40-48)が59万人。
摂食障害(F50)は総患者数の発表が無く、推定入院数が1.7千人、通院数は1.0千人。このうち神経性無食欲症(いわゆる拒食)が入院1.0千人、通院0.3千人。
自閉症の総患者数は2万7千人。一貫して増え続けています。
話をアルコール依存症に戻すと、昭和の時代には入院数が1万人台後半だったものが、今回は9.1千人とほぼ半減。通院は2千人程度からほぼ倍増しています(とはいうものの近年減少中)。アルコール依存症の治療が入院から通院にシフトしている時代の流れを反映しています。
こうして眺めてみると、目立つのはうつ病の患者が近年ぐんぐん伸びたことです。うつの患者が増えたのは、不景気が続き労働環境が悪化したり、人間関係が希薄になったという、ストレスフルな方向への社会の変化・・・が原因ではなく、製薬会社が新しい抗うつ薬(という利益率の高い商品)を売るために積極的にうつ病のキャンペーンをやったからです。いや、別にそれが悪いと言っているわけではありません。ただ、何らかのキャンペーンを行えば、いままで病院に行かなかった人が「ああ自分のこれは病気の症状なのだ」と思って医者に行くようになるってことです。
だから、もし依存症の新しい治療薬が開発されたり、薬でなくても何らかの新しい治療法ができあがれば、それを提供する会社が積極的なキャンペーンを行って、その結果依存症患者がわんさとクリニックを訪れるようになるでしょう。
でも、今のところそんなうまい話にはなりそうもないので、19人中の18人を治療へと誘う役割は、回復者自身の手にゆだねられているというわけです。なかなかそういうことに税金は使ってもらえないのです。
10月06日(水)
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